専門家が景気後退では無かったと判断
景気の拡大(拡張)、後退を決めているのは内閣府の認定する「景気基準日付」です。景気基準日付は、「一致DIの各採用系列から作られるヒストリカルDIに基づき、景気動向指数研究会での議論を踏まえて、経済社会総合研究所長が設定する」のです。「谷」と「山」が決められ、谷から山までが景気の拡張、山から谷までが後退とされるわけです。
様々な判断には、境界線があります。「病人」と「予備軍」の境目は、はっきりしているわけではありませんが、政府などが「血糖値等が一定の数値を上回ったら病人として扱う」と決めるから「病人」になるのです。景気も同様です。一定の基準に従って、景気が上を向いているか下を向いているかを決めているのです。その境界線は、単に数値だけではなく、有識者で作る「景気動向指数研究会」を開いて認定することとされています。基本はヒストリカルDIという数値を用いるのですが、それ以外の要素も加味しよう、ということで有識者が集められるわけです。
今回は、表面上の数字は景気後退を示唆していたようですが、機械的に数値だけで決めるのも問題だ、という事で、専門家が「底流を読んだ」のでしょう。恣意的に決めるのも問題ですが、丁度良い決め方があるわけではないので、仕方ないのだろうと思っています。
筆者の解釈は、以下のとおりです。「景気が後退であろうと後退直前であろうと、悪化した事は間違いないのだから、次回の消費税率引き上げは慎重に判断すべきだ」。「嵐の中に船を漕ぎ出して、船が傾いて倒れそうになったが、ギリギリ倒れずに済んだ。それなら、次の嵐の時には船を漕ぎ出すようなリスクは避けるべきだ」といった所でしょう。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。