緩やかな拡大だから長続きする
バブル期の景気は、文字通り「絶好調」でした。株も土地も持たず、給料も上がらなかった公務員でさえも、世の中のムードに酔って贅沢をしたと言われています(笑)。その意味では皆が景気回復を実感していたわけです。それに比べると、今は景気回復を実感している人の方が少ないくらいです。そんな時に「景気拡大がバブル期を超えた」と言われても、面食らう人は多いでしょうね。
気をつけて頂きたいのは、バブル期を超えたのは景気の規模や強さではなくて、景気拡大の期間の長さなのです。長さだけなら、バブル期に勝っても不思議はなく、むしろ自然なのです。高度成長期やバブル期の景気は、短距離走を全力で走っているイメージですから、力強いのですが、持続力に欠けています。一方、昨今の景気はマラソンのようなものですから、力強さに欠ける分だけ長持ちするのです。
戦後最長の景気拡大は、小泉内閣時代からリーマン・ショック直前までの73ヶ月でした。当時も、景気回復の実感に乏しいと言われていました。それだけにインフレ懸念がなく、政府日銀が引き締め政策で景気を悪化させる必要がなく、長持ちしたのです。
今回も、このまま行けば、景気は長持ちしそうです。来年末まで、海外経済に波乱がなければ、戦後最長を更新するかもしれませんね。
消費税増税時の景気は後退しなかったのか?
2014年4月に消費税率が引き上げられてから、しばらく消費が低迷するなど、景気が後退したとも考えられる状況が続きました。これが景気の後退であったのか否か、という点が今ひとつの焦点です。「3年前には糖尿病だったが、今は完治している」のか「3年前は糖尿病予備軍だったが、発症せずに現在は糖尿病の恐れは消えている」のか、といった議論ですから、正直言うとあまり食欲のわく話ではないのですが、世の中では結構議論が盛り上がっています。
それは、次の消費税率引き上げを意識して、財務省が圧力をかけて「あれは景気後退ではなかった」という結論を無理矢理導き出したのだ、と考える人がいるからです。内閣府が最強官庁の御意向を「忖度」したのか否かは知りませんが、筆者なりの考え方を示しておきましょう。
経済指標の悪化と景気の悪化は直結しない
景気は、大きな流れです。経済指標は振れますが、景気はそれほど頻繁には振れません。たとえば大雪で経済活動が麻痺したとしても、翌月の生産等がその分も取り戻したのであれば、「大雪で1カ月だけ景気が後退した」とは言いません。同様に、消費税増税前の駆け込み需要の反動で消費が1カ月だけ落ち込んだとしても、景気後退とは呼びません。
では、数カ月だったらどうでしょう? 数カ月であっても、景気の底流の大きな流れが上を向いていたのであれば、表面の「さざ波」の大きさに目を奪われるべきではないでしょう。かといって、「底流の大きな流れ」は見えませんから、そこは専門家に判断してもらうしかありません。