問題はドルをどの通貨に対して売るかだ。昨年までだったら、ドルに対する基軸通貨といわれたユーロを買うという選択肢が有効だったが、今や通貨危機で二進も三進もいかない。だから、ユーロ買いは起きにくい。実態を直視すれば、米国も欧州も当局は自国通貨安による外需の拡大を競い合っているというほかない。そうした綱引きのなかで、為替取引を膨らますのは得策ではない。
となると、仕掛けやすいのは、ノーガードの円だ。デフレの続く日本にとって、この局面での円買いは褒め殺しのようなもの。にもかかわらず円買いが進むのは、日銀による金融緩和はワンテンポ遅れると見てのことだ。その間、FRBは機動的に金融緩和に動くと見られるだけに、ドル売りは円買いと一対になって取引が完結する。
こうした動きは、11月の米中間選挙に向け、一段と強まることになろう。ファンド勢はかつてゼロ金利の円で資金を調達し、高金利通貨や金、原油などに投資して大儲けをした。今、彼らの得意技は動かざる日本を目掛けて、足の早い円買いを仕掛けることだ。リスクを分かっているのか、当局は機動的な介入や金融緩和には動けまい。
そう読み切ったファンド勢の高笑いが聞こえるようだ。その向こう側には政策不在のツケを払わされる日本企業の姿がある。
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