経済も「平時モード」へ?
ところで、GPV-2025はスタートが2年遅れたため、計画期間は8年間ということになっている。総額17兆ルーブルを8年間で割ってみると、1年あたりの負担額は平均2兆1250億ルーブル。10年間で19兆6000億ルーブルを予定していたGPV-2020(1年あたりの負担額は平均1兆9600億ルーブル)と比べると、毎年の装備調達費はむしろ増加するように見える。
しかし、ここで注意しなければならないのは、GPVがあくまでも「プログラム」であって、各年度の装備調達費が実際にいくらになるかは、毎年の予算折衝によって決まるという点である。
そこでGPV-2020実施期間中のロシア国防予算を見ていくと、実際に国防省が獲得できていた毎年の装備調達費は1兆9600億ルーブルよりもはるかに少ない(2012年ごろまでは6000-7000億ルーブルほどに過ぎず、2013年になってようやく1兆ルーブルを超えた程度)。そこで不足分は後年度に回されることになるが、そうなると計画期間の後半では非現実的な巨額の装備調達費を獲得せねばならず、そのような支出を財務省が認める可能性は極めて低い。したがって、GPV-2020で予定されている装備調達を全量実現することはとてもではないが不可能だろう、ということは会計検査院や民間の軍事専門家から度々指摘されてきた。
同じことはGPV-2025についても言える。「プログラム」としては毎年平均で2兆1250億ルーブルを支出することになっているとは言え、経済危機下でこれほどの装備調達費を財務省から認めてもらえるかどうかは全くの別問題である。
実際、ロシア政府が公表している3か年の予算計画(今年度予算とそれに続く2年度分の計画)では、2017〜2019年度の国防費(ここには装備調達費だけでなく、人件費や福利厚生費などが含まれる)が2兆7000〜2兆8000億ルーブルほどとされており、これでは1兆数千億ルーブル分程度の装備調達が関の山であろう。
また、これらの数字を予算の前提となるGDP予測と照らし合わせてみると、各年度における国防費の対GDP比は3%内外となる。これはウクライナ危機以前の水準であり、この数年続いてきた軍拡モードをロシア政府がそろそろ引き締めにかかってきていると解釈することができよう。