2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月6日

 11月2日付の英エコノミスト誌が「モディの憂鬱:首相は実質よりもスタンド・プレーに焦点を当てすぎている」との論説を掲げ、インドの政治状況に懸念を表明しています。論説の要旨は、次の通りです。

(iStock.com/vectomart/teddyandmia)

 ムードの変化は大きい。今年の始めには、モディ首相は不敗のオーラを持っていた。5年任期の半分以上が過ぎたのに、人気は高かった。3月、インド人民党(BJP)は、インドで最も人口の多いウタール・プラデシュの選挙で圧勝した。7月には、全国規模の商品・サービス税(GST)の導入に成功した。最近まで2019年の選挙での圧倒的勝利は確実視されていた。BJPは勝ちそうであるが、モディは輝きを失いつつある。政府支持率は通常上下するが、最近のモディの不人気は彼が実質より見かけにこだわるところからきている。

 経済面では、昨年の第1四半期の成長率年率9.2%は、今年の第2四半期5.7%に落ちている。モディの「Demonetisation」(流通している紙幣の86%が突然無効化された)に部分的に責任がある。モディはギャングや脱税者に大きな打撃を与えたというが、困難と混乱を招いた。GSTの実施振りも状況を悪化させている。モディは「簡素な良い税」と言ったが、専門家の意見を聞かず、3つの税率ではなく、6つの税率を導入し、中小企業に大きな事務負担をかけた。複雑さにビジネスマンは悲鳴を上げている。

 政府が批判を抑圧しても助けにならない。メディアは政府批判を遠慮し、しつこく政府を批判するジャーナリストは解雇されている。BJPのナンバー2の息子の企業の財務について追及した記者は訴訟を提起された。お世辞の文化がでてきており、政府の提案は改善のための議論の対象にならなくなっている。

 BJPは政策にそれほどの関心はなく、有権者に気晴らしを提供している。たとえばウタール・プラデッシュの新政府は建物をヒンドゥー教のサフラン色に塗り、ムスリムのタージマハルを名所から削除している。

 BJPの焦点は党の権威の強化である。今年初め、国防大臣のパリカールは小さなゴア州(インド人口の0.1%)の知事になるために辞任した。地元がそう要求したからである。GSTの円滑な実施に責任を持つ財務大臣が国防大臣を兼任し、中国やパキスタンとの緊張に対応している。民族主義を標榜しながら、防衛政策のかじ取りがいない状況を作っている。

 政治的には絶え間ない選挙活動はモディのためになった。BJPとその仲間がインドの29州の18を支配している。しかし不器用な政策決定は影響を与えてきている。グジャラート州での12月の選挙で苦労するかもしれないとの話さえある。

 モディは、選挙運動にだけ集中せず、国を運営する能力を示さなければならない。遅かれ早かれ、有権者はスタンド・プレーに飽きる。

出典:Economist ‘India’s prime minister focuses too much on appearances’ (November 2, 2017)
https://www.economist.com/news/leaders/21730880-consequences-are-beginning-catch-up-him-indias-prime-minister-focuses-too-much


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