2024年12月9日(月)

佐藤忠男の映画人国記

2010年11月11日

 千葉県からはいま、若くて有望な監督がつぎつぎに現れている。まずは荻上直子。千葉大学工学部を出て南カリフォルニア大学で映画を学んだ。ぴあ映画祭で認められてインディペンデント映画の監督となったが、「かもめ食堂」(2006年)など女性的な温かいユーモアで独特な世界をつくり出している。最新作の「トイレット」(2010年)はアメリカ留学で得た経験をよく生かした佳作だ。

映画『トイレット』は、“家族”という小宇宙で起きる衝突と、それを乗り越えて愛情という絆で結ばれる、家族の成長物語である。右は荻上直子監督。
©2010 “トイレット” フィルムパートナーズ
銀座テアトルシネマ、吉祥寺バウスシアター、ワーナー・マイカル・シネマズ板橋ほかにて全国公開中

 羽住英一郎はメジャーの男性映画の典型的な作品である「海猿」シリーズ(2004~10年)を力強くまとめあげて注目されている。

 千葉県からはいい俳優もたくさん出ている。古いところではまず、無声映画時代に掛け値なしのハリウッドの大スターだった早川雪洲(1886~1973年)。安房郡七浦村(現南房総市)の網元の息子で、アメリカに渡って日系移民向けの新派劇の俳優から1910年代のアメリカ映画の東洋趣味ブームに乗って世界的なスターになった。

 岡田英次(1920~95年)は銚子市。戦後まもなくの名作「また逢う日まで」(1950年)のガラス越しのキッスシーンが伝説的に有名である。

 いま大いに活躍している俳優ではまず木更津市の高橋英樹。若い頃にはくったくのない明朗さで日活のアクションもので、異色の存在だったが、年輪を重ねて渋さが加わって、物分かりのいい侍などで味を出すようになった。木更津からは中尾彬も出ている。ちょいとひねたうるさいおじさんというところでテレビで活躍している。

 いまや名優の域に達していつもその見事な演技で見る者をうならせている山崎努は松戸市の友禅染職人の息子である。「GO」(2001年)での在日韓国人の父親役など、重厚さと軽妙さを自在にないまぜてほんとに上手かった。

 滝田栄は印旛郡印西町(現印西市)。良識ある頼もしい中年の役どころなどで、テレビでは重要な存在だ。

 地井武男は八日市場市西本町(現匝瑳市)。「海軍特別年少兵」(1972年)の鬼兵曹など、熱くて激しいところのある役で本領を発揮する。

 永島敏行は千葉市。芸術派青春映画で珍重され、代表作は「遠雷」(1981年) だと思う。


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