2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月18日

 11月13日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「シーア派のイランとサウジアラビアの爆発しそうなライバル関係」と題した社説を掲載し、サウジのムハンマド皇太子のやり過ぎを批判しています。社説の論旨は次の通りです。

(iStock.com/evpv/budgetstockphoto/michaeljung)

 中東にとって最も不必要なのはさらなる花火である。サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)が、レバノンを宗派間抗争の新しい場にしていることはそれである。

 イランの勢力拡大と、そのためのレバノンのヒズボラなど代理人の使用は、地域を不安定化させている。しかし、その問題の解決は、サウジがイランと同じように行動して出来るものではない。

 サウジは、すでにイエメンでホーシー派との戦争で苦労している。シリアでの反乱勢力へのサウジの支援も効果的とは言えない。これに対しイランの革命防衛隊が訓練したシーア派民兵がシリアでもイラクでもIS退去後の領土をとり、強くなっている。

 MBSのカタール制裁政策も成果を上げていない。

 この宗派対立に、キリスト教やイスラム各派のモザイクであるレバノンを引き込むのは爆発につながりうる。先週、リヤドで、ハリリ・レバノン首相が、首相辞任を発表した。サウジの求めによると見られているが、やり過ぎの感がある。イランとサウジの代理者がレバノンで危うい均衡を保っており、それでシリア内戦がレバノンに波及しなかった。ヒズボラが強くなりすぎたのはその通りであるが、それが排除されうると考えるのは不遜であろう。

 レバノンは、ハリリ首相はサウジで人質になっており、サウジがレバノンの主権を侵していると考えている。

 その上、イランとの直接対決ではサウジに勝ち目はない。イランの利益にもならない。イランは2015年の核合意をトランプの攻撃から守るために慎重たるべきで、制裁解除からの経済利益も大事にする必要がある。

 不幸にしてトランプはサウジがもっと自己主張することを奨励している。トランプはサウジと歩調を合わせ、イランには強硬に出ている。

 サウジもイランも地域で保護すべき利益を持つ。対話を通じてその利益を相互承認することが平和のための緊張の解消に役立つ。中東ではあまりに多くの戦争がある。新しい紛争は防止されるべきである。

出典:Financial Times ‘Saudi Arabia’s explosive rivalry with Shia Iran’ (November 13, 2017)
https://www.ft.com/content/451e2a08-c7b4-11e7-aa33-c63fdc9b8c6c


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