「奈良で大仏を造っているころ、行基さんはこの山添村にもお寺を建てました。なんと言うお寺でしょうか?」
「神野寺〔こうのじ〕!」
正解である。こどもたちは神野寺をよく知っている。
「その神野寺には素晴らしい仏像が伝わっています」と言って写真をみせると、
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「知ってる! 知ってる!」
これにも驚いた。
飛鳥時代に造られた16㌢ほどの小さな菩薩半跏〔ぼさつはんか〕像。右手を頬にあてて考えごとをしている愛らしい仏さまである。
「この仏さまは何を考えているのでしょう?」
「奈良から山添村まで遠かったなあと考えているのでは」
これには大笑い。素敵な答えである。それを正解にしたいくらい。ホントは、すべての生あるものを救うにはどうしたらいいかを考え続けているのであるが‥‥。
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人はみんな違う。考えていることが違う。何を幸せと思うかも違う。だから、本当にみんなを幸せにしようと思ったら、難しいだろうなあ。考え込んでしまうのも当然である。
「さあ、写真をよく見て。体の表面がざらざらしていますね。それはどうしてでしょうか?」
答えは火事にあったから。でも、ということは、この仏像を火の中から救い出した人がいたということでもある。いま残っている古いものは、守られてきたものばかり。大切に守られてきたものだけが残っているという話をした。
話が終わると記念撮影。こどもたちがくっついてくる。みんないい表情をしている。
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撮影が終わって教室を出ようとしたら、ひとりの男の子が近寄って「もう帰るの?」と聞く。「まだ帰らないよ。一緒に給食を食べます」と言ったら、「やったあ!」と大喜び。「何班で食べるの? 僕の班で食べて」と大騒ぎ。私はなぜだか涙が出そうになった。