2011年に主要国・地域がどれだけ世界経済の成長に寄与するかを見てみると、購買力平価ベースでの計算なので名目ベースでの割合とは異なるが、中国を中心としたアジアが世界経済のけん引役となる姿は明瞭になる(図表4)。日米ユーロ圏が世界経済成長の2~3割しか寄与しない中で、新興国とりわけ中国・アジア諸国の存在感は際立って大きくなろう。
2007年4月の経済見通しでIMFが使ったことから、世界経済と米国経済の連動性が弱まることを示す「デカップリング」(切り離し)という言葉が広まるようになった。それは、新興国の輸出に占める米国向けのウエイトが下がっていることなどから、米国の成長率が鈍っても新興国が大きな影響を受けることはなく、世界経済全体は高成長が続くとしたものだ。
その後、米国経済の減速に伴って新興国経済も減速し始めると、「デカップリング」論の見直しが言われたりした。しかし、中国経済が自らの経済対策を中心に高成長を持続している現状を見ると、当面中国を中心とした新興国が相対的に高成長を保ち、低調な先進国との間で「デカップリング」の傾向が続くこととなろう。
日本経済は外需頼みが続く
先進国経済減速の中で日本経済も減速している。エコカー補助金終了による自動車販売急落や家電エコポイント縮小に加えて世界経済減速や円高も輸出鈍化を招いている。10~12月期の日本経済はマイナス成長となろう。
しかし、2011年になれば、景気の好転が見込まれる。補正予算が執行され、公共事業が増加する。中国・アジア経済もふたたび成長率を高め、輸出に好影響を与えよう。また、自動車メーカーはエコカー補助金終了前の駆け込み需要にかなり在庫で対応しており、その分需要が急減しても減産や在庫調整が比較的軽く済むことになる。
これらの要因からすれば、2011年になれば、日本経済は再び緩やかな回復を続けることになる。しかし、厳しい財政状況にあって積極的な経済対策を打つ余裕はなく、引き続き外需頼みの景気展開を余儀なくされる方向といえる。
世界経済の火種
~それは米国の金融緩和、ソブリンリスク~
以上が2011年の内外経済の見通しだが、いくつか火種があることに言及しなければならない。
ひとつは、米国の金融政策だ。インフレ率が低下し、デフレの可能性すらある中で、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和策がドル安と新興国や商品市場などにマネーの大量流入を招いている。さいわい、11月のFRB追加金融緩和(QE2)では、予想に反してドル金利が上がり、ドル安は一服している。
しかし、2011年も米国経済が低迷し、デフレが現実味を帯びるようになれば、さらに強力な追加金融緩和が実施される可能性は十分にある。そのときには、ドル安と新興国バブルが同時に加速されることになる。