2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月8日

 サンガーとブロードは、米国の情報機関が北朝鮮の核・ミサイルの開発の速度を過小評価してきた理由として、1)ソ連崩壊後旧ソ連のミサイル科学者が数多く北朝鮮に移住し、北朝鮮に貴重な技術移転をしたことに注意しなかったこと、2)金正恩が核・ミサイル開発を最優先課題として全力を注入したことの二つを挙げています。

 ソ連の影響については、ソ連は1960年代から北朝鮮の核関連科学者を受け入れ、これら科学者が北朝鮮の核開発を担ってきました。北朝鮮の核開発にソ連が果たした役割は大きいです。2)については、北朝鮮の核開発は金日成が始めたものであり、金正日もそれを受け継ぎましたが、金正恩の取り組みは2人を上回る熱心さで行われたのは確かなようです。金正恩は北朝鮮、金体制の存続に対する危機感が2人より強く、何としてでも米国の核の脅威に対する抑止力を獲得しようと考えたに違いありません。

 北朝鮮が米国東海岸を核攻撃できる能力の取得にとって残された課題は、大気圏再突入の際の熱に耐えられる弾頭の開発といわれます。これについて米政府高官は、北朝鮮がすでにその課題を克服したか、数か月で克服すると見ており、他方有力な研究者は、あと2年はかかると見ていると言います。ただ前者を北朝鮮の開発速度の過大評価というのは言い過ぎで、いずれにしても、近々北朝鮮は最後に残された壁を突破することは確実と見られています。

 米国、日本、その他の関係国は、この見通しを前提に北朝鮮政策を考える必要があります。

  
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