ウォール・ストリート・ジャーナルの1月9日付け社説が、南北会談は金正恩のプロパガンダの勝利であり、金正恩との融和よりは米軍の展開こそが平和の確かな保証だ、と述べている。要旨は次の通りです。
1月9日の南北会談は金正恩のプロパンガンダ勝利となった。南北は北朝鮮の平昌オリンピック参加に合意した。南北会談と「五輪停戦」は金正恩を平和の人と印象付けることになった。
これはひどく苛立たしいことだ。しかし金正恩の深謀は韓国と米国の間に楔を打ち込むことだ。今や文在寅(大統領)には米韓分断にならないことを明確にする責任がある。
戦略問題は米国としか話をしないとの、これまでの北の一貫した政策からすれば、新年の金正恩の南北会談提案は驚きであった。北の宣伝によれば韓国は米国の傀儡政権だ。最大の例外は金大中が南北首脳会談開催と引き換えに数百万ドルを北に支払った2000年だった。2000年の首脳会談により南北は「太陽政策」と呼ばれる短い融和の時期に入ったが、この間多額の対北援助が行われた。
文在寅は開城工業団地(北にとり毎年1億ドルの外貨収入源)を含む太陽政策を復活したいと考えている。先ず核、ミサイル開発を縮小すべきとの米国の政策に相反して、文在寅は5月の大統領就任時から対北直接対話を呼びかけてきた。北はこれを相手にせずミサイルの完遂を進めてきたが、今は南北会談により政治的利益を得ることができると考えている。
恐らくトランプ政権は五輪のために韓国の考えに従うことにしたのであろう。韓国は五輪の期間定例の軍事演習の延期を求め米国はこれを黙認した。
北はオリンピックの後も会談を継続し、それにより韓国を米から離反させることを狙っているかもしれない。国連制裁が効果を発揮し、燃料の流れは段々と減り、輸出による外貨収入も難しくなっている。そのような状況なので韓国との関係改善は非常に魅力的になってきた。しかし文在寅には大きな制約が掛かっている。国連制裁のため資金援助は困難であり、また北の急速な核兵器開発の結果半島の緊張が高まり韓国の対米軍事依存は高まらざるを得なくなっている。
米国はオリンピックの間も韓国沿岸にカール・ビンソン空母軍を展開すると明らかにしている。このような米軍の展開こそが、戦争を脅かしながら平和を求めるような金正恩との融和よりは一層信用できる平和の保証になる。
出典:‘North Korea’s Peace Games’(Wall Street Journal, January 9, 2017)
https://www.wsj.com/articles/north-koreas-peace-games-1515545256