2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月5日

 この社説は全くの正論です。北は五輪終了後も対話を継続させ米韓離反を狙っているかもしれないとの指摘は的確です。韓国主要紙の反応も総じて文在寅の対応に諸手で賛同ということではありません。

 10時間を超える会談の後、3項目の共同合意文書が発表されました。合意の第一は北の平昌五輪への参加です。第二は、「軍事的緊張状態の緩和」について、南北の偶発的な衝突を防ぐため軍の当局者の会談を開催すること、第三は、「南北関係の改善」につき問題の解決は韓国と北朝鮮の「当事者同士で行う」ことです。

 五輪に参加する北側高官代表団、選手団、応援団の派遣と北側関係者の滞在の便宜を南側が保障するという内容も共同文書に入っているといいます。これに対し、この滞在支援は国連制裁に反するのではないかとの指摘が出ています。制裁のためか、北は高麗航空の使用ではなく陸路で入るということです。韓国政府は制裁との関係につき米国や国連と協議すると述べています。

 今後、開城工業団地、金剛山観光開発の再開を北が求めてくる可能性も排除できません。制裁の厳格な実施が最重要であることを韓国に念押しすべきです。

 北の五輪参加は良いことですが、最重要問題の非核化は議論されませんでした。会談で韓国側が非核化に言及したところ、北は峻拒したといいます。南北会談の限界とリスクを表しています。今後南北で軍当局者会談が開催されるでしょうが、過去の例も考えると、大きな成果は期待できません。北は米軍の展開や合同演習の中止を強く求めるでしょう。

 南北関係に関する南北の文言には齟齬が出ています。韓国の発表では「われわれ民族が韓半島(朝鮮半島)問題の当事者として対話と交渉を通じて解決していくことにした」(9日夜韓国政府発表)であるのに対し、北側の発表は「われわれ民族同士の原則で、対話と交渉を通じて解決していくことにした」(10日未明朝鮮中央通信報道)となっています。南北間の言葉使いとして北側の文言には特別の意味が込められており、米韓同盟に楔を打つ考えが一層明確になっていると言われます。

 文在寅の、危なっかしいともいえる前のめりの外交には、一層の注意が必要です。文在寅は今の優先順位を十分に理解していないのではないかと思われます。更に文在寅は従来から北朝鮮問題では韓国が運転席にいるべきだとか、韓国がリードすべきだと述べています。過去の失敗も余り理解していないようです。南北対話が持続的に成功した例はないのではないでしょうか。南北融和を図る度に核問題がうやむやにされ、その間に北は核、ミサイルの開発に邁進し、今日の事態に至っています。核問題は今が最後のチャンスです。

 1月10日に文在寅はトランプと電話で会談、南北会談の結果を伝えた。韓国側の説明によれば、両首脳は米韓間の協力を強化することで合意し、南北協議が「米朝間の対話」につながる可能性もあるとの見通しを示したといいます。しかし最近も米韓間の対外説明に齟齬があった事例が指摘されており、懸念が残ります。

 今後、北の五輪参加準備がうまく進めば、ともかく3月中旬までは今の状態で推移するでしょう(オリンピック2月9~25日、パラリンピック3月9~18日)。しかし、五輪の後は元のギアに戻し、対北圧力を強めていかねばなりません。その間も対北制裁は効いてきます。

  
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