このYPP、これまで再生回数が10000回を越えたものは自動的に収入が得られるものだったが、変更後は「過去12か月間の総再生時間が4000 時間以上、チャンネル登録者数が1000人以上」のものとなった(ちなみに、YouTubeによる広告収入の制度の詳細については以下の記事が参考になる)。
この制度変更は、動画によって収入を得るYouTuberに一定のハードルを敷くものとなる。こうした対策を行う理由としては、毎日膨大な量の動画がアップされるYouTubeにおいて、その内容をすべてチェックするのが困難だから、というものが挙げられる。基本的に人工知能が内容を把握するYouTubeだが、人間がチェックしなければ問題があるかどうかわからないものもある(最近は、子供向けの動画を装いショッキングな映像をみせる「エルサゲート」と呼ばれる動画が問題になっており、こうした対策としても、最終的に人がチェックする必要がある。いずれ本連載で詳しく扱いたい)。
また、人気を得るために過激な動画配信を行う新規参入者に障壁をつくる意味もあるだろう。YouTubeはその仕様上、問題動画に企業広告が入ってしまい、広告が逆効果になることもある。それは企業にとっては迷惑行為であり、こうした点もYouTubeは懸念している。
「つながり志向」回帰となるか
YouTubeの改革は始まったばかりだが、そのYouTubeを買収したGoogleやFacebookは、2018年に入って改革案を相次いで出している。FacebookのザッカーバーグCEOは2018年1月、ユーザーに表示するフィードにおいて、メディアのニュース記事よりも家族や友人の投稿表示を優先させると発表した。
これは2016年以降、Facebookやインターネット社会を悩ませてきたフェイクニュース対策の一環である。Facebookは長年ニュース記事に紛れてフェイクニュースを垂れ流しているとメディアからバッシングを受けてきたからだ。
ただしフェイクニュース対策だけでなく、より根本的な問題も存在する。Facebookはアメリカの大学と共同でFacebookが人々のメンタルに及ぼす影響を調査し、2017年12月に発表している。それによれば、Facebook上の積極的な投稿や友人との双方向的コミュニケーションがメンタルヘルスを向上させる一方、フィードに表示されるニュースを閲覧するばかりの受動的利用が増えると、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすと発表した。要するに、Facebookが自ら利用方法によっては悪影響があると認めたのである。
そのため、Facebookはニュースを見せるのではなく、友人や家族などの投稿を多く見せることで本来の「つながり」を求めると発表したことになる。これによって、ニュース配信などが相対的に減ることからFacebookの株価が一時的に下がった。Facebookもこの事は承知していたことであり、SNSの健全化のためにFacebookが舵を切ったと言えるだろう。
ただし、発表後数日でFacebookは自らの活動方針をいくらか修正し、ニュースの質を上げることに力を入れるとも述べている。そのため、どの程度Facebookが「つながり志向」に回帰するかはわからず、また質の高いニュースが何を意味するのか、といった判断も難しい。とはいえ、相対的に様々なIT企業が、メディアとしての健全化傾向に向かわなければ生き残ることができないと感じていると思われる。