監督の本広克行くんはアニメの大ファンだから。クレジットでサブタイトルを見せる見せ方ひとつにしても「ルパン三世」を意識してるとか、偉大なアニメ作品へのオマージュが彼の嗜好でいっぱい入っていたりもするんですね。
かと思えば脚本の君塚良一さんはテレビのバラエティ出身でしょ。バラエティの「落とし方」は、彼が萩本欽一さんから習ったことにいろいろ基づいていたり。テレビ人のテレビ人のための映画だった、という面はありましたね。それが第1作だった。
そして、テレビに戻して放送すれば、そんなに大損はしない。またそのため、大宣伝もテレビでかける。ハリウッドだと、劇場でまず当てる。その先に、世界的に入札させる権利料が吊り上がる未来があるからさらに宣伝する、という運動法則になるんで、僕らとまた違いますけど。
テレビ向きの映画もある
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亀山 その点で意外だったのが「それでもボクはやってない」という、2007年に公開した周防正行監督で加瀬亮さん主演の、痴漢の冤罪を扱った映画です。
周防さんが、10年ぶり(角川映画「Shall we ダンス?」以来)に映画をつくりたいって言ってる、と。痴漢の裁判をたくさん見てきて、冤罪を描きたいんだ、と。
直感で言うと、万人受けするテーマじゃない。でも、題名と、テレビで宣伝する場合の社会性を想像したら、テレビ的なんですよ。行けるんじゃないか、と。
だから大宣伝をして、周防さんにコメンテーターまでやってもらい、映画を作りました。
興収は15億円くらい。
それで、1年後、今度はテレビにかけようか、と。ふつう、15億円くらいの収入挙げた映画だと、行って10%くらいかな、と思ってた。蓋を開けたら17%の視聴率を取ったんですよ。
浜野 理由はなんだ、と?
亀山 たぶんテレビで映画公開にさきがけてやった大がかりな宣伝の刷り込み効果なんですね。
たまたまそのとき、映画館へ行くまでのモチベーションは持たなかった、でも面白そうだなとは思った人が、きっとたくさんいた。テレビでやるんだったら見てみたい、と。
だとすると、テレビ局がつくる映画って、そういうやり方を考えてもいいのかもしれない。
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©2007 フジテレビジョン/電通/東宝/小学館
やっぱり僕が製作を手掛けた「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」も、「それでもボクは」と同じ2007年公開でしたが、映画的には興収9.3億で、10億には届かなかった。それでもテレビにかけたら15~16%取ったりするんですね。
なんでってそれは、テレビ向きだからなんですよね。
あの映画、バブル時代の六本木なんかを忠実に再現してる。見ながら、確かにああだったよね、こうだったよね、そうだよねって、誰かに言いたい。そうなるように作ってある映画なのに、劇場だとほら、黙って見ていないといけないじゃないですか。「あ、ここ六本木交差点のアマンドのとこだよね、今もおんなじだね」と声に出して話しかけるわけにはいきませんよね。