浜野 だけどプロデューサーって本来そうじゃないですか。お金集めをして、スタッフ集めてっていう。この連載では黒澤監督の晩年と付き合った原正人さんにも出ていただきましたけど(「生誕100年 映画プロデューサー・原正人氏を迎えて」)、プロデューサーあっての映画であり、映画監督なんですよね、本来。日本は映画プロデューサーの評価が、ハリウッドと比べたら不必要に低すぎると思う。
亀山 実は僕だって、「あそこのあのカットはねえ」って話をしたいですよ。
でもビジネスとして一旦やりだしちゃったからには、儲けていく仕組みを作り続けていかなきゃいけないんですよね。苦しいですよ。
中身の話、してた方が楽なんじゃないかって思うことないわけじゃありません。しかも僕、資金集めのところの苦労はない。個人でやってる訳ではなく、会社としてやっているビジネスなので。言い訳できない、それどころか非常に恵まれた環境でプロデューサーができているわけですからね。
ほんとのプロデューサーは、資金集めて映画をつくり、利益を出して投資家に報い、自分もきちんと取って次の成長資金も手元に残す、そういう仕事をする人のことですからね。ハリウッドの独立系プロデューサーはみんな、そういうことしてるでしょ。
だから『キネ旬』で「金儲けのために映画をつくって何が悪い」みたいなこと喋りましたけど、そんなこと言えたのは、ほんとはおカネの苦労してない立場だったからなんですね。
(構成・谷口智彦)
亀山 千広(かめやま・ちひろ)
フジテレビ取締役、映画事業局長。
1956年、静岡県生まれ。80年にフジテレビ入社後、ドラマのプロデュサーとして、「あすなろ白書」「ロングバケーション」「踊る大捜査線」などを手が ける。99年、04年には、「踊る大捜査線 THE MOVIE」「踊る大捜査線 THE MOVIE2」で第18回、第23回藤本賞を受賞。10年7月から公開された第3弾「踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!」も大ヒットを記録した。
12月11日から公開された「ノルウェイの森」は、松山ケンイチ、菊池凛子、水原希子らが出演。世界50カ国・地域での放映が予定されており、高い期待が 寄せられている。