2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月16日

 トランプ大統領は就任以来、「米国第一」を掲げ、TPP離脱に象徴されるように、多国間の貿易枠組みを敵視するなど、保護主義的・孤立主義的な通商政策が大きな懸念と非難を招いてきた。トランプは、最近、CNBCとのインタビューでTPPへの復帰検討を示唆したり、ダボスでの世界経済フォーラム(ダボス会議)の演説で孤立主義を否定するなどしたが、米国の通商政策の予兆とみるべきなのか。

(iStock.com/Sergey Oplanchuk/ urfinguss/ Vectalex)

 まず、ダボス会議における1月26日のトランプ演説の通商政策に関する部分の要旨は、次の通りである。

 「米国第一」は孤立主義を意味しない。米国が成長すれば世界も成長する。米国の繁栄は世界中に多くの雇用を創出し、米国の創造性とイノベーションが世界中の人々の繁栄と健康の増進につながっている。

 米国は、雇用と成長を達成するための国内の改革を追求する。同時に、共通の繁栄を促進し、ルールに則って行動する人々が報われるよう、国際貿易システムを改革する努力もする。

 ある国が他国を犠牲にしてシステムを悪用するようでは、自由で開放的な貿易は成り立ちえない。我々は自由貿易を支持するが、公正で相互主義的(reciprocal)でなければならない。不公正な貿易は結局、我々すべての害になるからだ。

 米国は、知的財産権の大規模な窃取、補助金、国家主導の経済計画といった、不公正な経済的慣行を座視しない。略奪的な振る舞いは、グローバル市場をゆがめ、米国のみならず、世界のビジネスと労働者に害を与える

 他国の指導者が自らの利益を守るのと同様、米大統領として、私は常に国益、企業、労働者の利益を守る。

 我々は我々の貿易法を実施し、貿易システムの完全性を取り戻す。公正で相互主義的な貿易を主張することによってのみ、米国だけでなく世界にとって機能するシステムを作ることができる。

 米国は、すべての国と相互主義的な2国間貿易協定を交渉する用意がある。それには、TPP加盟国も含む。その何か国かとは既に合意に達している。残りの国とも、全当事者の利益となるのであれば、個別あるいはグループでの交渉を検討する。

(‘Remarks by President Trump to the World Economic Forum’, White House, January 26, 2018)


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