リベラル政党が政権を握る日米。財政支出を伴う大きな政府を志向したが、
両国とも与党は選挙で大敗し、政策転換を余儀なくされた。
オバマ政権がブッシュ減税延長を決め、景気に明るい兆しがみえる米国。
相変わらず子ども手当など景気浮揚効果の乏しい政策を続ける日本。
税収の2倍の歳出を決めた日本には、ギリシャ危機のような財政破綻が迫っている。
「景気の見通しを高め、企業の事業計画立案に役立つ」。米国の日本経団連というべきビジネスラウンドテーブルが、オバマ政権によるブッシュ減税の延長措置に歓迎の声明を出した。つい最近までオバマ政権の経済政策を批判し続けてきただけに、米国の産業界の空気の変化を如実に物語る。
ブッシュ減税の延長は2011年の米国の実質成長率を0.5~1.0%押し上げるとみられている。減税延長を受け米ゴールドマン・サックスは12月17日、11年の成長率見通しを2.7%から3.4%に、12年を3.6%から3.8%へとそれぞれ引き上げた。
景気見通しの上方修正に加えて、政策運営の反企業の色彩が薄れるとの期待感から、10年12月の米国株はクリスマス・ラリーを楽しんだ。舞台回しを用意したのは、11月の米中間選挙での与党民主党の記録的な大敗である。医療制度改革、金融規制改革など、リベラル(反市場的)な経済政策を進めてきたオバマ政権が、大きな政府を嫌う米国民から肘鉄を食らったのである。
一瞬途方に暮れたものの、オバマ大統領は大胆な路線転換を試みた。野党共和党の主張を丸飲みする形で、高所得者減税を柱とするブッシュ減税の2年延長を打ち出したのだ。金持ち減税に難色を示す民主党からの抵抗はあったが、衆寡敵せずとばかりに共和党との妥協案を通した。
オバマ大統領が目指すのは12年の大統領選での再選。ここはひとつ、景気回復を最優先させる必要があるだけに、今しばらくは共和党の主張にも大胆に妥協するだろう。そう読んだ経営者の心理は好転し、投資家は株式の買いに走った。現金なもので、株高による消費刺激(資産効果)が発揮されて、12月のクリスマス・セールはまずまずの仕上がりだった。
米景気はリーマン・ショック後、大きく落ち込んだあと、財政・金融政策の総動員を受け、09年春ごろから持ち直しに転じた。そのまま回復するような楽観シナリオが溢れたが、10年6月ごろから二番底の懸念が台頭した。それではいけないということで、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融の量的緩和に踏み切り、政権も景気対策に動いた。そして景況感が好転した。バブル崩壊後に訪れる悲観と楽観の振り子といえる。
バラマキ続ける日本
米国の楽観ムードは崖っぷちに追い詰められた日本にとって、最後のチャンスと呼ぶべきものだ。日本の状況がとんでもないことは、10年12月に決まった政府税制改正大綱と政府予算案をみれば、ハッキリする。