2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2018年2月22日

 UDIラボに相談にきた青年が、溺死した恋人に送ったペンダントは、友人の女性が胸にさげていたことが明らかになる。彼女は青年に恋愛感情を抱き、友人を海に突き落としたのである。

 青年は恋人の葬儀に訪れた、その女を刃物で刺そうとする。

 ミコトは「まだ間に合う」と止めようとする。青年は「なにが間に合うのよ」と、二度にわたって刺した。

 その場にいた、中堂は青年を止めなかった。

 ミコト「なぜ止めなかったの」

 中堂 「殺す奴は殺される覚悟をもつべきだ」

 ミコト「あなたの気持ちを考えたり、遠慮するのは、くそバカバカしくなりました。さっさと解決して、永遠の問いに決着をつけましょうよ。同情なんてしない」

 脚本・野木亜紀子が紡ぎ出すセリフの数々は、心にしみる。

ドラマの謎解きのカギ、意表を突く科学的な手法

 野木は、「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS・2016年)や「重版出来!」(TBS・2016年)のヒットで知られる。映画なら「図書館戦争」シリーズである。

 作品ごとにさまざまなテーマに挑戦するとともに、ストリー展開には定評がある。

 今回のドラマもまた、1話45分の中でどんでん返しの連続にため息が漏れる。

 ミコトの同僚で解剖のパートナー役を務める、臨床検査技師の東海林夕子には市川実日子が、医学部生でバイトの久部六郎には窪田正孝が配されている。

 エピソード6「友達じゃない」(2月16日)に至って、夕子(市川)が「異性交流会」といってミコトを誘っては断られる合コンの後に、意識を失って目を覚ますと、ベッドの隣には参加者の男性が死んで横たわっていた。その後に、たて続けに参加者のもうひとりの男性も死亡する。

 容疑者となった夕子の疑惑を晴らそうと、ミコトと中堂は死んだ男たちが、手と両耳に赤い斑点があることに注目する。ふたりが心肺停止状態で急死した原因と関係はあるのか。

 犯人は、医師免許を持つベンチャー企業の社長だった。彼は、死んだ仲間たちと仮想通貨の相場操縦によって、4億円の金銭を得ていた。これをひとり占めしようとしていた。

 遺体の赤い斑点は、腕時計型のウエラブルコンピューターと、心拍数などをこの端末に表示するために両耳に取り付けた小さな装置の跡だった。ベンチャー企業の社長が開発したものである。

 彼は、遠隔操作によって、微弱な電流を流すことによって、心肺停止状態に陥れたのだった。

 エピソードが重なるごとに、ミコトと中堂の関係は反発から協力に変わっていく。

 ドラマの謎解きのカギとなる、科学的な手法はいずれも意表を突くものである。サスペンスドラマが往々にして、人間関係のアヤのなかに犯行の原因を求めるのに対して、そればかりにとどまらずに、科学が最後の決め手になる。

 ミコトの育ての母親役で弁護士・三澄夏代に薬師丸ひろ子、UDIラボの所長の神倉保夫役に松重豊が登場して、緊迫したドラマにユーモラスな一瞬を作っている。「序破急」のテンポも魅せる。

 脚本の野木亜紀子は、推理ドラマの新しい領域を切り開いたといえるだろう。
 

  
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