2024年11月21日(木)

田部康喜のTV読本

2018年2月22日

 石原さとみが法医解剖医という新たな演技の領域に踏み込む、TBS「アンナチュラル」(金曜夜10時)は、今季のドラマの最高傑作である。

(iStock/Jeng_Niamwhan)

 野木亜紀子の脚本は、法医解剖医の三澄ミコト(石原さとみ)と同僚の中堂系(井浦新)それぞれの過去の事件を縦糸として、毎回の事件が横糸となって織りなされている。

 ミコトは、練炭による一家心中のたったひとりの生き残りであり、中堂は何者かに殺害された恋人の死の真相を追っている。

 ふたりが所属している「不自然死究明研究所(UDIラボ)」は、警察や個人の依頼を受けて遺体の解剖をてがけ、死の真相を探る。法医解剖医としてはベテランの中堂は、自宅にほとんど帰らずに、職場に泊まり込む。

 法医解剖の意味ついて、中堂はミコトに対して死の真相を明らかにしなければ「永遠の問い」を、遺体の家族やその周辺に残すと言い切る。

 中堂自身が、恋人の死について「永遠の問い」を抱いている。恋人の遺体の解剖を執刀したのは中堂だった。口の中に赤い金魚のような赤斑が浮かんでいた。葬儀社の従業員に頼んで、同様の赤斑がある遺体があった場合は連絡を受けて、確認する。しかし、いまだに真相はわからない。

心にしみる数々のセリフ

 エピソード5「死の報復」(2月9日)は、青森沿岸で入水自殺として警察が処理した事件について、恋人がUDIラボに他殺の疑いがある、と相談に訪れる。

 ミコトと中堂は、遺体が海水の吸引が少ないことから、顔面が水面に衝突した瞬間に気を失って、溺死したのではないか、と考える。

 さらに、警察の資料から、入水した地点と遺体があがった地点がかなり離れていることに疑問を持つ。中堂は、現地に出かけて、ふたつの地点の海水を持ち帰る。これと、遺体の肺のなかの海水を比較することにした。

 遺体の肺の中の海水は、入水地点ではなく、発見地点とプランクトンの様子が同じだった。気絶して、その後に溺死したことが裏付けられた。発見が早ければ、救出が可能だったのである。


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