2024年12月22日(日)

田部康喜のTV読本

2017年12月6日

 巨額の不正経理によって経営危機に陥った、東芝は半導体子会社を分離独立したうえで、増資を図ることで経営の継続を目指している。東芝の破綻を救ったのは、同社の研究部門を率いて「フラッシュメモリー」を開発した、舛岡富士雄・東北大学名誉教授の功績である。

 NHK総合「ブレイブ 勇敢なる者」は、この舛岡を「硬骨エンジニア」(11月23日)として、その研究生活と人生を追った。それは、東芝が世界的な製品を市場に送り出した時代の栄光と、なぜ東芝が凋落したのかを描いたドキュメンタリーだった。

(iStock/Supersmario)

最初の評価は「こんなものは製品にならない」

 フラッシュメモリーは、スマートフォンやデジタルカメラ、サーバーの記憶媒体、PASMOのような交通機関で利用できる非接触型のICカードなど、ありとあらゆるデジタル機器に内蔵されている。このメモリーの特徴は、小さく、電源が切れてもデータが壊れず、軽い。

 米国の雑誌フォーブスは、2002年に舛岡をカバー写真に使って「評価されない英雄」のタイトルを掲げた。「日本の半導体事業が、舛岡が描いた方向に行っていたなら違った道を歩んであろう」と、賞賛した。

 新聞記者時代に電機メーカーの取材を担当していたとき、舛岡を取材したのは昇格の名目で「技監」という、部下の研究員も研究費もない役職に追いやられた1993年の直後だったことを、番組で知る。フラッシュメモリーの研究を続けたかった、舛岡は翌年に東北大学教授に転じたのであった。

 経済記者は「技術」に注目するのが重要である。製品やサービスは、直線的に改良されることもあるが、過去の技術が一新される、断続的な瞬間がある。舛岡に取材した当時、デジタルカメラなどの記憶媒体に使わるようになったのに、興味を持った。半導体の主流は、DRAMであったが、フラッシュメモリーの将来性を淡々と語る、舛岡に心うたれた。


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