2022年8月14日(日)

WEDGE REPORT

2018年3月23日

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香田洋二 (こうだ・ようじ)

ジャパンマリンユナイテッド顧問 元自衛艦隊司令官

1949年生まれ。72年防衛大学校卒業。海上幕僚幹部防衛部長、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、2008年に退官。09~11年、米ハーバード大学アジアセンター上席研究員。

 そこで北朝鮮はミサイル実験の口実を得るために五輪を利用した。つまり、北朝鮮は平昌五輪に選手団等を派遣することで世界へ融和姿勢を示し、米韓との首脳会談も要請して直接対話の意思を示した。米韓合同軍事演習の実施にも態度を急変させ「理解」を示しているが、受け入れたわけではない。「米韓合同軍事演習が強行され善意が踏みにじられた」として、ミサイル実験をする可能性もある。相手側に擦り寄ったと見せて、自らの論理で反攻する、まるで「トロイの木馬」を想起させる。

 一方米国も、北朝鮮が早ければあと2、3カ月でICBMを完成させると見ている。国家の安全を脅かすICBMを放棄させ、北朝鮮の核拡散のリスクに終止符を打つため強い威嚇・牽制を続けており、北朝鮮が完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄を実施することが対話の条件としている。

冷静に向き合うべき暴発の「シナリオ」

 米国に「核保有国」として認めさせたい北朝鮮と、北朝鮮の「非核化」を絶対に譲らない米国という相容れない構図に、米国の国家安全保障に直結するICBMの完成が迫っているこの状況は、いつ軍事衝突が起こってもおかしくはない。

 それでは、米朝開戦の条件は何か。米国はいつ攻撃を仕掛けるのか。そこに明確な「レッドライン」は存在せず、対話の決裂や核実験などの個別事象とも必ずしもリンクしない。米国が自国に対する脅威を認識したのち、最も攻撃が機能すると判断したタイミングが開戦の時だ。

 第一次朝鮮核危機時は極東地域の問題でもあり、同盟国である韓国の反発と嘆願によって米国は攻撃を思いとどまった。しかし今回は、同盟国が反対しようとも米国は個別的自衛権を発動して北朝鮮を単独で攻撃するだろう。

 では、米国の攻撃にはどういう選択肢があるだろうか。北朝鮮の核関連施設だけを限定的に先制攻撃する「ブラッディ・ノーズ作戦」、いわゆる〝鼻血作戦〟が一部で報道されているが、軍事的にいえば非常識な作戦だ。相手の反撃能力を残すことによって返り討ちにあう可能性を高めるだけである。相手の軍事能力を徹底的に叩き、反撃をさせない「ノックアウト作戦」以外に効果はない。同様に、金正恩の暗殺だけを企図する〝斬首作戦〟も、北朝鮮の体制転覆が狙いではない米国がその作戦を実行する可能性は低い。

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