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2018年3月23日

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香田洋二 (こうだ・ようじ)

ジャパンマリンユナイテッド顧問 元自衛艦隊司令官

1949年生まれ。72年防衛大学校卒業。海上幕僚幹部防衛部長、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、2008年に退官。09~11年、米ハーバード大学アジアセンター上席研究員。

 なぜなら米軍の攻撃は、〝衝撃と畏怖(いふ)〟が特徴であるからだ。誰もがやらないと思うタイミングで、空からの総攻撃を仕掛ける可能性が高い。民間人を事前に退避させれば、北朝鮮に気づかれ逆に攻撃を受けるリスクが増大する。一部報道では、韓国で200万人以上が犠牲となるという予測もあるが、それは地上戦を前提とした仮定である。

 直近3回の戦争で、米軍は奇襲攻撃により相手の戦闘能力をほぼ無力化することを成功させている。今回も、既に米軍は衛星等を動員した情報戦で北朝鮮のミサイル配置箇所や地下施設の出入り口等の位置を掴んでおり、北朝鮮の指揮命令系統を麻痺(まひ)させた上で一気に叩くことができる。そのため初動で北朝鮮の反撃能力の9割を無力化することが可能である。

 もっとも、開戦後に中国と衝突する最悪のケースを避けたい米国は「4つのNO」(①北朝鮮の体制変更を求めない②金正恩体制を崩壊させない③38度線を越え北進しない④南北統一を急がない)を表明していることからも、中国に対して事前の申し合わせをすることは考えられる。米軍地上軍が38度線越えの北進をしないため、中国軍は米軍事作戦に介入できない。

トランプが許さない
25年間の「食い逃げ外交」

 これまで北朝鮮は、核やミサイル開発などの強硬的な姿勢を示し、その後開発停止に合意することで制裁解除とエネルギーや食糧支援を受けると、約束を実質的に反故(ほご)にする、いわば「食い逃げ外交」を実施してきた。

 トランプ大統領は、四半世紀にわたり弱腰姿勢であった過去の大統領と同じ轍(てつ)は踏めぬと考え、実質的な放置の時代から軍事力も辞さないという転換を図っている。したがって、開戦を避けるために「米国が北朝鮮の核兵器保有を許容し管理する」シナリオは許さない。世界中への核拡散許容を意味するからだ。

昨年末の米韓合同軍事演習は過去最大規(写真・YONHAP NEWS/AFLO)

 世界には中東を中心に核兵器の所持を欲する国家が多く存在する。例えばサウジアラビアは、自ら核開発する力を持たない。そこで北朝鮮が自国での開発を「許された」核ミサイルを売り込むだろう。米国はじめ他国がそれを止めれば、北朝鮮は自国への介入だとして、核による反撃で恫喝(どうかつ)し、結果として白昼堂々核と弾道弾を世界中に輸出することができる。北朝鮮一国を「許容する」ことで、国連の制裁などこれまでの各国の努力が骨抜きになる格好だ。これは米国に対してだけでなく、全ての人類に対する大量破壊兵器の脅威への挑戦なのである。

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