リビア情勢の惨状も考えによってはアラブ民主化革命が第二段階に入ったことを示している。カダフィー体制の崩壊は、徹底的に民衆を武力弾圧しても、結局独裁体制が維持できないことが明らかになった。柔軟な対応も、強硬な対応も結果は同じということである。アラブ諸国の根本的な政治変革は、共和制だろうと王制だろうと避けがたくなったのである。民衆たちの叫びは、アラブの問題、イスラームの問題ではなく、「自由と人間の尊厳」を求めている。この波はアラブ世界を越えて、強権的な独裁体制を維持する国々にまで及ぶだろう。
アルジェリアはどうなるか?
アルジェリアがチュニジアやエジプトと同じ政治的、社会的問題を抱えており、リビアのカダフィー体制が倒れたら次はアルジェリアだろう、と多くの者が予想している。だが、アルジェリアは不気味なくらい平穏である。反体制運動を展開してきたCNCD(変革と民主主義のための国民連合)は、2月22日、二派に分裂した。一つは、人権活動・市民派グループ、もう一つは、RCD(文化民主連合)など政党系グループである。2月26日(土)、政党系グループが首都アルジェでデモと集会を呼びかけたが、ごく少数の参加者であった。集会場とされた「シュハダー(殉教者)広場」の周辺には、警察の装甲車はあちこちに配置され、広場には警察官が市民の接近を禁じた。空にはヘリコプターが一日中、旋回し、見張りを怠らなかった。完全に封殺されたように見える。
しかし、である。軍・警察による強権体制、腐敗と汚職、若者たちの失業、そして何よりも今政変の底流にある「自由と人間の尊厳」の侵害に対する怒りでは、アルジェリアはチュニジアやエジプトに負けてはいない。街中で警官に公然と殴られたり、役所でコネがないため書類を不受理(あるいは後回し)にされたりするという体制側の侮蔑的態度、いわゆる「ホグラ」問題は全てのアルジェリア人が憤っている問題である。この平穏さは「嵐の前の静けさ」なのか。その答えはカダフィー体制の完全な崩壊後、明らかになるだろう。
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