2024年12月5日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月18日

 フランスのマクロン大統領は、5月1日~3日、豪州を訪問した。5月2日には、シドニーにおいて、ターンブル豪首相とともに、共同記者会見に応じた。その際、記者から、太平洋地域における中国の台頭に関する質問があり、ターンブル首相、マクロン大統領がそれぞれ答えている。その内容を紹介する。

(iStock.com/Vectorpower/krugli/oleg7799)

ターンブル豪首相

・中国の経済的台頭を歓迎する。この規模と早さは人類史上まれに見るものである。このお蔭で大勢の人が貧困から脱出できた。この中国の成長を可能にしたのは、この地域におけるルールに基づいた秩序である。

・この地域の平和と相対的調和は、法の支配によって可能となった。リー・クワン・ユーの言葉を借りれば、大魚が小魚を食べ、小魚が小エビを食べてしまってはいけないと言うこと。

・我々が求めているのは、法の支配であり、ルールに基づく国際秩序である。この地域の全ての参加国、大魚から小エビまでが、利益を享受できることが重要な目的である。

・中国の地域への一層の投資を歓迎する。中国の成長から得られる利益を歓迎する。が、我々は、ルールに基づく国際秩序の維持、良き統治に関与する。この地域の全ての国家が、法の支配によって可能となった繁栄の弧を享受し続けられるように。

マクロン仏大統領

・小エビと言うと、「ニュー・カレドニアの小エビ」を思い出すように、これはとても重要なことである。私は、豪首相の見解を共有する。中国の競争に反対することは何もない。中国の競争は皆にとって良いことである。中国の中間層にとっても良いことだし、世界や地域の経済成長にも良いことだ。

・ここで重要なのは、特にインド太平洋地域では、ルールに基づく発展を守ることである。この地域で、必要な均衡(balances)を守ることである。

・この新しい状況で重要なのは、この地域における覇権(ヘゲモニー)を許してはならないということである。だからこそ、このパートナーシップが、進展に重要である。インド、その他パートナー諸国との構想も、何かに反対するものでも対応するものでもなく、前向きな構想である。それは、「我々には共通するものがある。」ということだ。我々は、このインド太平洋地域に、自由の行動を起こしたい。

・我々は、「共通の主権、自由と自由主義」を守りたい。この言葉は、昨年パースでターンブル首相が述べたことでもある。だから、この地政学的、防衛、経済、科学技術、教育等でも協力する構想が重要なのである。

・この(中国の台頭を含む)新しい状況は良いことだが、それは新しい秩序に沿うものでなければならず、すなわち地域の均衡を保ち、法の支配を遵守するものでなければならない。

出典:Prime Minister of Australia ‘Q&A at the Joint Press Conference with His Excellency, Mr. Emanuel Macron, President of the French Republic’ (May 2, 2018) 
https://www.pm.gov.au/media/qa-joint-press-conference-his-excellency-mr-emmanuel-macron-president-french-republic)


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