マクロン大統領も述べたように、フランスにとって、オーストラリアは、地球の裏側の国である。フランス大統領の豪州訪問は、2014年のオランド大統領に次いで、歴代2人目とさえ言われる。それだけ、普段は、EUの一か国であるフランスにとっては縁遠い国なのである。
今回、マクロン大統領が豪州を訪問した理由は幾つかある。一つは、2016年に、豪州が次期潜水艦の共同開発国としてフランスを選択したことである。実は、この件に関しては、日本も売り込みを行ったが、経験不足等から、残念ながらフランスに及ばなかった。マクロン大統領は、豪州の潜水艦メーカーとも会っているが、この案件をきっかけに、フランスとしては、豪州との関係を深め、貿易拡大等を求めて行きたいのだろう。二つ目の理由は、フランスの海外領土の一つであるニュー・カレドニアで、今年11月に行われる独立を問う国民投票である。その投票を前に、フランスの大統領としては現地を訪れ、フランスが良い国であることをアピールしたい。そのすぐ隣に位置するのが豪州ということである。
そして、三つ目の理由が、最も重要である、戦略的理由である。マクロン大統領は、豪州訪問前には米国を訪問し、さらに今年3月には、インドを訪問している。どちらも国賓待遇で、大歓迎を受けた。マクロン自身が語るようにフランスは今回、インド太平洋地域の平和と繁栄に関与することを宣言した。フランスはBrexit後、EUで唯一この地域に領土を有する国である。そのフランスにとって、インド太平洋地域が自由で開かれ法の支配に基づいた国際秩序が維持された所であることは重要である。
上記の中国に関する質問への回答においても、マクロン大統領の回答はターンブル首相の回答以上に明快である。地域の均衡(バランス)を崩すものを許さない、覇権(ヘゲモニー)を求めるものを許さない、と述べている。マクロンには、自由主義思想への強い思い入れがあるのかもしれない。そう言えば、中国共産党が敵視していたノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏が亡くなった時、マクロン大統領は、すぐに自らのツイッターで、哀悼の意を述べていた。
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