さらなる住宅価格の高騰も
カリフォルニア州内では500万戸以上の住宅が既にソーラーパネルを設置しており、全米でも最高の普及率になっている。2020年からの条例は新築を対象にしているが、現在でも既存の住宅にソーラーを設置する場合、様々なリベートが用意されている。例えばロサンゼルスで電力会社がロサンゼルス電気水道局の場合、設置したソーラーによる電力1Wあたり0.25ドルのリベートが用意されている。現在スタンダードとなっている6kWのパネルを設置すると1500ドルのリベートとなる。さらにソーラーを設置した場合、その年度の税制優遇措置の対象になる。
同州がソーラーの設置に熱心なのはもちろん大気汚染防止という観点もあるが、マイクログリッドの普及、という意味合いも大きい。エネルギー委員会のコミッショナーであるアンドリュー・マックアリスター氏は「新しい条例の導入により建物はこれまでになくエネルギー効率の良いものになる上に、信頼できるグリッドの一環として機能するようになる」と語っている。
これは、テスラなどが推進しているEVを蓄電池として機能させる家庭内ソーラーパワーシステムのように、過程がソーラーで得た電力を蓄電してピーク時の利用に充当させる、あるいは電力会社に売電する、というシステムを充実させ、電力不足に陥らないインフラを構築する、という意味合いだ。同州ではサザン・カリフォルニア・エジソンがテスラと提携して全米最大規模の蓄電システムを建設する、など再生可能エネルギーとその貯蔵に以前から取り組んできた。
ただし条例に対する反対勢力も存在する。最大のものは州議会の共和党で、「ただでさえカリフォルニア州の住宅は他州に比べて割高であり、大都市でのホームレス増加など住宅不足の弊害が起きている。このような状況の中でさらに住宅建設価格を上乗せするような条例は如何なものか」という批判を繰り広げている。
2020年には概算で11万7000戸の住宅、4万8000軒の集合住宅が建設される予定だ。2017年時点でサンフランシスコ近辺の一戸建て住宅の中間価格が80万ドル、ロサンゼルス近辺でも65万ドルに達しており、賃貸も上昇を続けている。これ以上住宅が高くなれば住宅取得率が下がり他州への人口や企業の流出が避けられない、という批判にも一理ある。
しかしカリフォルニア州では「ゼロ・エミッション住宅」、すなわち家庭で使用する電力などをすべて自宅で賄い外部エネルギーを利用しない住宅の建設を最終目標にしており、今回のソーラー義務付けは「最初の一歩」という位置付けだ。2040年には州内でガソリン車両の販売を禁止する、という法案も進められており、条例はこのまま実施となる可能性が高そうだ。
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