2024年4月19日(金)

From LA

2018年3月27日

 ビル・ゲイツ、イーロン・マスク、ジェフ・ベソス、マーク・ザッカーバーグ、ウォーレン・バフェット……これらは米国を代表する富裕層、いわゆる「トップ1%」に数えられる人々だ。多くが独自の財団を持ち、教育、環境、福祉などに多額の献金を行なっている。

 しかし、そのような財団基金は実際のところ国民にとっての直接の手助けになっている、とは言えない。それならばむしろトップ1%が中低所得層に対し直接現金を差し出す、という形で社会の平等性を問うべきではないか、と主張する1%の1人が登場した。フェイスブックをザッカーバーグ氏と共に創業したクリス・ヒューズ氏だ。

(arthobbit/iStock)

 ヒューズ氏はハーバード在学中にザッカーバーグ氏とフェイスブックを立ち上げ、その後は2008年のオバマ大統領の選挙キャンペーンでデジタル・アドバイザーを務めるなど、IT業界で広く活躍、本の執筆も行なっている。

 そのヒューズ氏がデジタルポッドキャストの「レコード・デコード」でのインタビューで「米国人により良い教育、健康保険などを与えたい、と真剣に願うならば、財団を通しての寄付などではなく直接現金を配るべき」という考えを明らかにした。

 ただし同氏の考え方はこのところ世界中で話題になっている、国民が全て一定の所得を国や自治体から得る、というユニバーサル・インカムとは少し異なる。例えば年収5万ドル以下の家庭に対し、月に500ドルを支給する、というような考えで、米国で現在行われている低所得層に対する減税措置である「アーンド・インカム・クレジット(EITC)」の拡大版のようなものだ。

 EITCは「一家の長であり」「特定以下の収入であり」「株式などによる利益が一定額以下であり」「子供が未成年」などの条件があり、1975年に施行されて以来改善が加えられていない。住んでいる自治体による格差もある。こうした格差を是正し、「人々が日々の暮らしに不自由しないだけの収入補正を行うことが大切」とヒューズ氏は語る。

 大学生で巨額の富を手にし、それを元に現在も1%に留まるヒューズ氏は自らについて「確かにラッキーだったと言えるかもしれないが、現在の世界では自分のような成功者は決して珍しくない。一つが成功すれば極端な金を手にすることができる、そういうシステムになっている」という。一方で過去10年間米国で新たに生み出された雇用の9割以上はパートタイムや契約、期間限定などの持続性のないもので、収入も最低賃金に近いものがほとんどだ。「失業率こそ低くなったものの、新たな雇用は厚生利益などを含まない、国民に安定した暮らしを保証するものではない」と同氏は語る。


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