2024年11月22日(金)

日本を味わう!駅弁風土記

2011年3月31日

 このそぼろ玉子の日持ちがしないようで、大館駅弁の鶏めしが買える場所は、大館駅、秋田駅、秋田空港やその近隣に限られる。食品の衛生管理や保存技術の向上と交通機関の発達で、駅弁も全国を飛び交う時代に、人気や知名度のある駅弁が地元から外に出てこないことは、もはや珍しいことである。秋田や大館に行けば難なく買えて、しかし行かないとなかなか買えない。このことも「鶏めし弁当」の魅力を引き立てる。なお、寒い時期の駅弁催事で東京都内に時々出現する際には、そぼろ玉子が他の駅弁でもよく使われる錦糸卵に置き換わる。

創業112年の老舗が醸す存在感

 現在の大館駅には、秋田や青森へ行く昼間の特急が一日4~6往復と、寝台特急「日本海」「あけぼの」各1往復を残し、優等列車や長距離列車が消えている。青森と上野や大阪を結ぶ長距離列車が朝から晩まで発着していた頃に行われていた、プラットホーム上での駅弁の立ち売りは、1996(平成8)年頃を最後に終了した。現在は駅舎のコンビニエンスストアと、駅前の駅弁屋で「鶏めし弁当」が買える。日中であれば事前の予約により、列車への積み込みにも対応するという。

 改札口を通り駅前に出ると、背後の駅舎より高い3階建ての駅弁屋ビルが真正面に建っている。駅前広場の中に建つ忠犬ハチ公の銅像より目立つ存在感は、「鶏めし弁当」の駅弁としての存在感に共通すると感じるし、地元における駅弁屋の存在感にも通じるのではないかと想像する。駅弁は、大館の名物である。

(注記)2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震により、東北地方の鉄道はすべて運休したが、奥羽本線の秋田駅から青森駅までの区間は14日に運行を再開し、駅弁も22日までにはすべての鶏めしの販売が再開されている。


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