「今では、コンビニやスーパー、レストランから居酒屋、衣料品店に至るまで、大手小売チェーンのほとんどがPOSシステムを導入しています。POSシステムを導入することで、商品の販売データを単品ごとに把握することが可能になります。店舗では、その販売データを分析し、売れ筋と死に筋の商品を見極め、廃棄ロスを減らしたり、機会損失を最小限にとどめることに活用しています。これが機能しないと、頻繁に品切れが起こったり、大量の売れ残りが生じるなど、顧客サービスと販売効率を著しく低下させる可能性があります。また、長期的に見れば、仕入れや販売の計画が立てられなくなることにもつながってくるでしょう」。
つまり、POSシステムは小売業者にとってマーケティングや経営の一端を担っているといえる。
日本でPOSが導入されたのは1979年に遡る。その後、1982年にセブンイレブンがPOSレジを導入したのを皮切りに、急速に普及。財団法人流通システム開発センターの資料によれば、JAN型POSシステムの導入店舗数は2009年度で45,882店(111,081台)にものぼる。会計処理のスピード化や、クレジット決済、各種クーポンの処理など、販売戦略から顧客の利便性向上に至るまで、POSシステムが果たしている役割はきわめて大きい。
製造拠点はおもに3箇所
そして、前述の通り、POSレジは、感熱紙のレジロールをセットしないと作動しない仕組みになっている。ところが、レジロールに感熱加工を施せる設備が、日本ではほぼ3箇所に集中してしまっている。王子製紙の神崎工場(兵庫県)と、三菱製紙の高砂工場(兵庫県)、そして先日の震災で被害を受け、操業を停止した日本製紙の勿来工場(福島県)である。
矢野経済研究所のレポートによると、レジロールの2009年度上期の月当たりの販売実績は、王子製紙が1,200t、日本製紙と三菱製紙がともに1,100tで、合計3,400tとなっている。
日本製紙の勿来工場では4月5日より、感熱加工のラインがようやく稼動を始め、「生産量も震災前とほぼ同じレベル」(日本製紙CSR本部広報室)にまで回復しているというが、感熱加工に必要な一部の薬品については、「今は在庫で対応しているものの、業界全体として懸念のある状態」(同)だという。また、三菱製紙の高砂工場では、「感熱加工する前のベースペーパーが八戸工場から送られてくるため、今のところ供給が止まっており生産していない。高砂工場にはパルプからベースペーパーを作る設備もあるが、レジロール生産再開の目処はまだ立っていない」(関係者)という。