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2018年6月14日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年生まれ。85年に早稲田大学卒業後、フリーランスとして活動。「堤清二 『最後の肉声』」(文藝春秋)で、第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)を受賞。近著に『起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡』(文藝春秋)。

 16年11月には流通している紙幣のおよそ86%の流通を停止させてしまったインド政府。それはとりもなおさず、政府のキャッシュレス宣言に他ならない。隣国中国のモバイル決済額がおよそ650兆円にもなろうという時代だ。24年には中国を抜いて14億4000万人を抱える世界最大の人口大国となるインド。モバイル決済の潜在能力は計り知れない。リライアンスの視線の先にあるのは、モバイル決済で一人勝ちしている風景だ。

 ドレミングのビジネスモデルが世界的な評価を得るきっかけとなったのは設立間もない時期に米サンフランシスコで行われた「テッククランチディスラプト」(ベンチャー企業コンテスト)に出展、欧米政府などからシリア難民の自立に極めて有効だと絶大な評価を得たことだった。

 先のサウジアラビア、インドなどより先にドレミングに積極的な働きかけをしていたのは、移民という国内問題を抱える欧州の国々だった。その中でもいち早くドレミングに接触し、最も熱心だったのが英国だった。ドレミングに潜在的な可能性を見出した英国政府は、英国のフィンテック業界のコンソーシアム「イノベートファイナンス」に日本企業として初めて入会を許した。また、ロンドンの有名なフィンテック関連のインキュベート施設「レベル39」に入居が認められた唯一の日本企業も同社だった。

新金融に意気込む英国
門前払いする日本

 昨年3月には英国金融庁とともに「英国・日本フィンテックイニシアティブ」というイベントを開催した。英国金融庁長官がわざわざ出席した他、同国財務省、対投資省などの幹部が出席し、スピーチに立った。英国政府の並々ならぬ姿勢が垣間見えた瞬間だった。会場ではノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス(グラミン銀行創設者)のビデオメッセージも紹介された。

 英国政府のこうした姿勢の背景にはEU離脱、いわゆるブレグジットによる欧州での孤立がある。端的に言うならば、英国政府は流入する難民問題の経済的な解決策とともに、かつての〝パックスブリタニカ〟ではないが、植民地として治めていた国々に、英国系の銀行、HSBC(香港上海銀行)、ロイズ、バークレーズなどを通じてドレミングのシムテムを導入させようとしているのである。

 英国での小口ファイナンスは日本から見れば〝闇金〟に近い金利を取る。それに代わってドレミングのシステムを使えば、給与の中からまずローン分が天引きされ、回収不能は起こらない。また、旧植民地国の農家へのファイナンスのあり方も激変すると英国政府は見ている。

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