赤坂英一の野球丸

2018年6月27日

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データに勝る指揮官のリーダーシップや精神的タフネス

 田代コーチと同様、梨田監督の辞任もつくづくもったいないと思う。梨田監督は本来、大変温厚で物わかりのいい人物である。今回フロントとの軋轢の原因となったと言われる仕事の領分に関しても、あらかじめフロントに「ここからここまでがフロント、そこから先が現場の仕事」と通達されれば、きちんと理解して本分を尽くす指揮官なのだ。現に、日本ハム監督時代(08~11年)は、私のインタビューに対して、フロントとの関係をこのように語っている。

 「日本ハムでは、監督に就任する前に、戦力編成やコーチ人事などは、すべてフロントがやりますから、と球団側に説明されました。例えば、『トレードやドラフトで新しい選手を獲得するときは、あらかじめこういう選手を獲りますよと監督に伝えますけど、それを決める前に監督に意見を聞くことはないですよ』と。『コーチについても、ひとりぐらいは梨田さんの望む人を入れますが、基本的にはフロントで選びますから』とね。私としては、ああ、そうですか、という感じ」

 10年秋のドラフト会議のとき、日本ハムが早大の斎藤佑樹を1位指名することを聞いたのも、「ドラフト前日の夜か当日の朝ぐらいだった」と梨田監督は答えている。このときも、「ああ、そうか、楽しみだな、と思ったぐらいだった」と笑っていた。

 しかし、いざチームが窮地に陥ると、実に肝の座ったところを見せる。その最たる例が、日本ハムを優勝に導いた09年、チームがA型インフルエンザに集団感染したときだ。10人以上の主力選手が次々に隔離され、25人のベンチ入りメンバーが19人に減少。野手が12人しかおらず、9人をスタメンに入れると控えが3人しか残らない。その上、右腕と頼むコーチ2人も感染してしまった中、梨田監督は「みんながそろうまで頑張ろう!」と懸命にチームを鼓舞し続けた。

 「あの09年のシーズンは参ったねえ。なんでおれだけインフルエンザにかからないのか、おれだって倒れたいよ、と思った。おかげで、シーズン中は胃を壊しましたよ。病院に行ったら、逆流性食道炎と言われた」

 こういう指揮官のリーダーシップや精神的タフネスは、いくら最新鋭のデータ収集分析システム、最近流行のサイバーメトリクスやトラックマンであっても数値化できるものではない。野球もデータだけで勝てるスポーツではないのである。

  
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