今月13日、阪神、巨人という名門球団で、破廉恥な不祥事が相次いで明らかになった。まず阪神の山脇光治スコアラー(契約社員)が12日、JR仙台駅付近の家電量販店のエスカレーターで、前にいる女性のスカートの中を背後からスマホで盗撮し、宮城県警に現行犯逮捕された。山脇スコアラーは当初、取調に対し容疑を否認したそうだが、「きれいな人だったので、後ろ姿を撮ろうとしたら、風でスカートがめくれ上がった」という言い訳がまた情けない(14日に仙台簡裁より罰金50万円の略式命令を受けて釈放。その後、阪神は契約解除)。
阪神がこの盗撮事件の対応に追われていたのと同じ13日、巨人は「球団規則に違反する不品行な行為があった」として、選手2人に謹慎処分を科したことを明らかにした。ペナルティーを受けたのは捕手・河野元貴、投手・篠原慎平。10日深夜から11日未明、知人男女10人と都内飲食店の個室で宴会中、篠原が裸になり、その動画を河野がスマホで撮影した上、インスタグラムに投稿していたのだ。
篠原の動画を閲覧できたのは河野のフォロワーに限定されており、短時間で削除されたとはいえ、巨人では2年前の2016年にも若手選手たちによる野球賭博が発覚したばかりだ。巨人ファンだけでなく、広く一般社会にも「またか」という悪いイメージを与えたのは間違いない。事態を重視した球団は「選手の指導、教育を徹底し、再発防止をはかって参ります」とのコメントを出した。
このように歴史と伝統を誇る阪神、巨人の醜聞が明るみに出たのと同じ13日の夜、西武では今年不祥事を起こした選手が、球団史上に残る快挙を成し遂げた。16年夏の甲子園の優勝投手で、作新学院高校からドラフト1位で入団しながら、19歳だった今年1月、所沢市内の公共の場所で喫煙していたことが発覚した今井達也である。
今井は4月末までユニフォーム着用禁止、試合出場停止の処分を科され、二軍での調整を経たのち、今月13日に本拠地メットライフドームでのヤクルト戦に初登板初先発、見事にプロ初勝利を飾った。西武の投手がプロ初登板初先発で初勝利を挙げたのは、1999年の松坂大輔(現中日)以来19年ぶりだった。
2月14日付記事『相撲協会は西武球団を見習え』でも書いた通り、今井の喫煙はファンによる球団公式ホームページへの投書という形で露見した。今井が未成年だったことから、球団発表は匿名にとどめる方法もあったはずだが、今井が喫煙したのが公共の場所だったこと、すでにファンにも知れ渡っていることを西武は重視。「実名を出してもいいのか」と問い合わせたメディアもあった中、あえてコンプライアンス(法令遵守)の徹底という西武グループの基本方針を貫き、実名発表に踏み切った。
そして、この西武の方針が結果的に、今井のプロ初勝利を大変感動的なものにしたのである。西武の広報担当は試合前、今井の両親が球場に観戦に来ていることをマスコミ各社に連絡。今井が勝った場合は今井本人と両親とのスリーショット撮影、囲み取材を行う段取りまで整えていた。しかも、記者との質疑応答が一段落したあとも、立ち会った担当者が「ほかに質問はありませんか?」と促す念の入れようだった。
もし、喫煙が発覚したとき、今井の名前が伏せられていたら、こういう会見は成立しなかっただろう。取材している記者としても、せっかく2年目の若手投手が初勝利を挙げたその場で、表向きには匿名になっている不祥事について質問するのは憚られる。それで、マスコミが喫煙にはまったく触れずに初勝利を報じたら、「もうなかったことにしたいのか」と、ファンの間に違和感と後味の悪さを残してしまうところだった。