活字メディアとの「WinWin」な関係
Voicyは現時点で、すでに約50の活字メディアと提携している。パーソナリティが利用する配信アプリには、「毎日新聞」や「TechCrunch」、「ASCII START UP」などの記事が配信されており、パーソナリティはそれを自由に選んで読み上げたり、自分なりの解説を加えて紹介することもできる。
映画好きのパーソナリティであれば、「松竹シネマズ」や「ぴあ映画生活」などの記事を使って自分の好きな映画を紹介する。パーソナリティにとってはしゃべるためのネタを提供してもらえるし、メディアにとっては記事を紹介してもらいつつ、リンクから記事に飛んできてもらうこともできる。じつによくできたWinWinな仕組みと言える。
「活字メディアと提携するアイデアは起業する前からありました。もともと既存の産業に音声産業を絡ませることで、パイを膨らませたいと考えていたので」と緒方代表は明かす。
スポンサーはコンテンツに口出しできない
冒頭で、Voicyには多くのインフルエンサーがチャンネルを構えていると紹介したが、独自のスタープレイヤーも誕生している。
「たとえば、『今夜もよく眠れるギークな話』というデザイナーのハルカナさんのチャンネルはとても人気で、声がかわいいというのも人気の一因です。DJ調で経済新聞を読むDJ Nobbyさんもフォロワー2000人を超えていますし、『毎日朝5分でインプット』という番組を続けてきた学校の受付をしている29歳の女性もフォロワーが1000人を超え、ラジオ局のアナウンサーとして採用されることが決まりました」
人気のチャンネルには、スポンサーが付いているものもある。現状は月額制で、ひとつのチャンネルにつき一社に限られている。また、スポンサーはコンテンツにいっさい口を出すことができない。そこには緒方代表の強いこだわりがある。
「Voicy社の使命のひとつは『声っていいね』という文化を創っていくことです。そのためには、担い手であるクリエイターを尊重するサービスにしなければなりません」
実際、スポンサーになりたいとオファーしてきた企業には、その番組を応援したい理由を書いてもらう。それをパーソナリティに見せてマッチングが成立するとスポンサーになることができる。「コンテンツに対するリスペクトのないスポンサーには入ってほしくないんです」と語る。
ここまで聞いて「声」に対する熱い想いは十分に伝わってきた。だが、ビジネスとして考えたとき、果たして持続可能なビジネスモデルと呼べるのかという疑問も浮かんでくる。それを見透かすように、緒方代表は次のように続けた。
「いま皆さんが目にしているVoicyのサービスは、じつは事業全体の3割に過ぎません。そこで稼ごうとも考えていません。残り7割の部分が、マネタイズを担う当社の根幹事業になります」