IoT時代の「主戦場」は音声になる
「私たちはIoT時代の音声放送のインフラを作っているんです。これからは机や椅子や扉など、あらゆるモノがインターネットに繋がり、情報を発信していく時代に突入します。その主戦場は『音声』になると確信しています。あらゆるIoTに音声を配給できる仕組みを作ることで、BtoBのビジネスを一手に担っていくのが当社の事業戦略です」
アプリを使って録音したものをサーバ上にアップすることで、PC、スマホ、スマートスピーカーなど、あらゆるデバイスに音声を配給することができる。目の前で一連の作業を見せてもらったが、ものの30秒もしないうちに録音したデータがアップされ、誰もがストリーミングできる状態になった。
Voicy社はいま、企業のコンテンツの音声化を請け負うとともに、スマートスピーカーへの配信も代行している。Google Homeのニュースジャンルには現在15のメディアが登録されているが、そのうち6つがVoicy社の配給によるものだ。毎日新聞、スポニチ、野村證券、中京テレビ、gooニュース、ITビジネスニュース(Voicy社)である。さらに緒方代表は、「どんな企業にも音声放送産業に参入できる可能性がある」と強調する。
「極端なことを言えば、たとえばトイレメーカーが、トイレの中で流す音声放送をつくってもいいと思うんです。トイレで心地よく聞けるコンテンツを作り、そこに広告枠を入れて売ることができれば、トイレメーカーの事業内容に『音声放送産業』と記載される日が訪れるかもしれません」
リスナーの行動を「解析」して音声を「改善」する
Voicy社は個人の音声放送チャンネルを運営しながら、IoT時代に対応した音声配信のインフラを開発している。さらに、「音声体験のデザインコンサルティング」という事業も手掛けている。
「企業からの相談を受けて、リスナーに心地よい音声体験を与えるための提案を行っています。BGMを流しましょうとか、ここは女の子の声に変えましょうとか、リスナーが聴く時間帯を朝と想定するなら、最初の一言は『おはようございます』で始めてみましょう、とか。活字メディアの良質なコンテンツも、ただ読み上げるだけではぜんぜん刺さらないので、それをリスナーに刺さるかたちに変えていく作業はとても重要です」
それを可能にしているのが、Voicyに実装されている解析機能である。いつ、どこで、誰が聴いているかわかるうえに、離脱時間を秒単位で計測できるため、たとえば放送開始から8秒後に離脱している人が多ければ、そこまでに面白いツカミを入れましょうと提案する。リスナーの行動データを解析しながら、どうすれば心地よく聞いてもらえるかを日夜研究しているのだと言う。