2024年11月24日(日)

WORLD CURRENT

2011年5月26日

 実は、市場関係者が最も注目しているのは、FRBのバランスシートの規模と米国株の動向だ。リーマンショック後の09年3月に実施した国債購入(QE1)と昨年11月のQE2をきっかけに、米国株は上昇に転じている。理屈は単純。FRBがお札を刷って国債を購入しているとの思惑が広がったからだ。バーナンキFRB議長もその辺の事情はよく心得ている。

 QE2の期限到来とともにいきなり国債保有を減らし、マーケットから「すわ金融引き締めか」と受け取られ、株価が下がることを何よりも警戒しているのだ。

 米国の失業率はリーマンショック後の最悪期から低下したといっても依然9%。今回の不況の根っこにある住宅市場もじり安が続いている。ここで株価が下落に転じたら、米景気の先行きはいっぺんに暗くなりかねない。この辺がバーナンキ議長の見立てなのだ。

 もう一つ、米経済には大きな爆弾がある。財政赤字削減を巡って、民主、共和の両党が鋭く対立し、暗礁に乗り上げてしまったことだ。こうした状況を懸念し、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、現在AAAと最上級の米国債の格付け見通しを「ネガティブ(弱含み)」とした。直ちにではないにせよ、米国債が格下げされれば、ドルの信認も大きく揺らぐ。

 もっと目の前にある爆弾は、米政府の債務上限(借り入れ限度額)の引き上げを巡る議会審議が難航していることだ。8月にも実際の政府借り入れが債務上限を上回る可能性が出てきている。その場合は、政府機関の窓口を閉鎖(シャットダウン)しなければならず、行政運営に支障を来す。これまた米国への信認を揺るがす事態になりかねない。

 FRBによる市場に配慮した金融政策が続くと高をくくっているせいだろうか。今のところ、株式市場や債券市場などでは浮き足立った雰囲気は出ていない。むしろヘッジファンドなどは稼げるうちに稼げとばかり、様々な取引を拡大している。リスクに比べて金融取引が不釣り合いに拡大しているときは、当然ながらほんの些細な出来事を引き金に反動が起きかねない。

中国失速のシグナル

 その時、何が起きるか。米国株に調整圧力がかかるのは当然として、日本として油断できないのは為替相場の動向だろう。一言でいえば、再び思いもよらない円高に見舞われかねない。経路は2つある。

 まず、米景気回復を期待してドル買いに走っていた個人の外国為替(FX)取引の巻き戻し。そして次に来るのが、高金利通貨や新興国投資に走っていた投資信託などへの解約増加に伴う外貨売りだ。

 こうした動きが杞憂に終わればよいのだが、震災後の日本に見切りをつける形での外貨投資は相当に膨らんでいる。日本経済の先行きが楽観を許さないのは確かだが、海外のリスクに目をつぶるような投資は、これまた意図せずして新たな爆弾を抱え込むようなものだ。


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