2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年8月23日

・米国は今までインド太平洋地域に様々な貢献をしてきたが、今日、新たに1億130万ドルの構想を打ち出す。将来の基礎的分野であるデジタル経済、エネルギー及びインフラ整備に使用される。

・1番目のデジタル連結とサイバー・セキュリティのパートナーシップには、第一段階として2500万ドル投資される。米国は、通信インフラを技術援助や官民協力等を通じて支援する。

・2番目の構想は、アジアEDGE(エネルギーを通して開発と成長を強化する)と呼ばれる。EDGEは、今年1年で5000万ドル投資する。米国は、パートナー諸国が、エネルギーを輸入したり供給したりするのを支援しながら、インド太平洋地域に、安定したエネルギー市場を育成する。

・3番目はインフラである。米国は、国家の主権と地域の統合と信頼を進展させたいと考えている。これらは、インフラがきちんと整備され、資金的にも無理なく、社会的にも責任ある形で受け入れられることで可能になる。

・これらの構想を進めるにあたって、米国は、同盟諸国やパートナー諸国と協力する。最近下院を通過し現在上院に回ったBUILD法案も重要である。この法案により、米国の開発援助予算は二倍以上の600憶ドルになる。

・米国の企業となら、世界の人々は、思ったものを得られることを知っている。誠実な契約、正直な規約等である。ビジネスにおける整合性こそ、アジア太平洋経済ビジョンにおける主たる柱である。各国が求めている事でもある。

・先般、私(ポンペオ国務長官)は、初めてベトナムを訪問したが、今週(8月1日)からは、マレイシア、シンガポール及びインドネシアを訪問する。ASEANは、文字通りインド太平洋地域の中心である。

参考:Michael R. Pompeo "America's Indo-Pacific Economic Vision" (Department of State, July 30, 2018)

 トランプ政権のインド太平洋地域戦略を、経済的側面から語ったのが、今回のポンペオ国務長官の「インド太平洋経済ビジョン」演説である。演説の中で、ポンペオ国務長官は、インド太平洋地域と米国との係わりを歴史的に振り返っている。パートナー諸国の経済成長を支えた例として多くの国名が挙げられた。具体的には、日本、韓国、香港、シンガポール、台湾、フィリピン、マレイシア、タイ、バングラデシュ、ベトナム、インド、インドネシア、ネパール、モンゴルである。また、過去も、これからも、APEC(アジア太平洋協力会議)、ASEAN(東南アジア諸国連合)、ADB(アジア開発銀)と協力して行くことが述べられた。

 演説の中で、しばしば、米国は正直で、自由で開かれたアジア太平洋を追求し、支配したり、政治的影響力を行使したりはしない、と述べられた。これは、暗に中国を批判していることは明らかである。

 ポンペオ長官が演説を行った7月30日付のワシントンポスト紙では、ジョッシュ・ロウギンが、米国は、アジア諸国に対して、「一帯一路」以外の選択肢を与えた、とポンペオ長官の演説内容を評価した。

 マティス国防長官がインド太平洋安全保障戦略を、ポンペオ国務長官がインド太平洋経済戦略を打ち出し、トランプ政権のインド太平洋戦略は本格化した。この戦略を裏付けるための米国議会の法案も、次々に成立している。オバマ政権では、「アジアへの回帰」という言葉が流行ったが、実際、第一期のクリントン国務長官が退いてから、第二期オバマ政権では、広島や真珠湾での日米同盟の絆を深める演説はあっても、具体的案件はほとんど進まなかった。

  
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