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World Energy Watch

2018年8月16日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

私的企業になる理由は?

 公開会社の株式を買い付け私的企業にする大きな理由の一つは、一旦私的企業にし、資産の入れ替え、事業内容の見なおし、従業員削減などの企業価値向上策を取り、その後再度上場することにより株価を大きく上昇させることだ。

 特に、上述のレバレッジド・バイアウト(LBO)と呼ばれる、被買収企業の資産を担保に借入、資金調達を行う方式では、企業価値向上後借入金を返済すれば株式部分の価値が大きく向上することがある。あるいは、借入金の比率を大きくし、株式部分の比率を縮小することで、一株当たり利益を増やし、大きな配当を受け取ることもある。借入金比率が大きくなることから、金利負担に耐え切れないリスクは無論ある。

 1982年に行われたギブソン・グリーティングのLBOでは8000万ドルの買収資金のうち7900万ドルが借入金により賄われ、私的企業になった。翌年再度上場された際には、100万ドルを出資した投資家は2億ドル以上を手にしたとされた。LBOは日本の企業買収でも時々名前を聞くKKRにより開発され、使われた手法だ。1989年にはRJRナビスコをKKRがLBO方式で買収したほどだが、米国において企業価値向上余地がある企業が少なくなってきたことから、90年代になりLBOを利用する買収は大きく減少した。

 マスクは、今回の買収はLBOではないとしており、私的企業にする狙いは再上場による株価上昇ではなさそうだ。サウジアラビアのファンドが筆頭株主になるのであれば、将来資金が必要になった際にファンドに対する増資により対応することも可能になるが、それは公開会社でも私的な会社でも、どちらでも可能な手法だ。なぜ、私的企業にする必要があるのだろうか。マスクは短期的な利益への株主からの圧力が高いとも発言しているが、今もテスラは長期的に利益を出す企業とみている株主も多いのではないか。マスクも3分の2の株主は株を持ち続けるとみている。そうであるならば、公開企業のままで良いはずだ。今回の私的企業、非公開化、サウジアラビア・ファンドの参加には不明点が多く、まだ紆余曲折がありそうだ。

  
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