地道な努力が実り、参入当初はシェア数パーセントだったものが、今では20%以上(同社推計)となった。インドネシア現地法人の2010年度の売上高は4692億ルピア(約42億円)と、前年度の3969億ルピア(約38億円)に比べ約18%の伸びであり、全売り上げに占める蚊取り線香の割合は約70%だ。また、同社の海外売り上げは10年度で約51億円ということから、蚊取り線香の貢献ぶりがうかがえる。
一方、蚊取り線香元祖のKINCHOは1960年、タイでの製造・販売をスタートさせた。「ホァカイ」(鶏の頭の意)というブランド名で、当初はトップシェアを誇っていたが、現在は、競合の「バイゴンブランド」や「スワンブランド」との価格競争が厳しく、シェアは低下している。タイでの販売価格は12巻で14~15.5バーツ(日本円で40円弱)だが、他社はそれより安い価格で販売しているという。同社は製造工程において精選された原材料を使うなどして、効き目の高い商品を提供する戦略をとっている。
独自の製品開発にも力を入れている。タイではデング熱の蔓延が問題になっていた。原因の一つは、デング熱を媒介するネッタイシマカが、従来の蚊取り線香に対して抵抗性がついてきたことがある。そこで、KINCHOは2006年よりタイの理科系大学であるマヒドン大学と、デング熱対策の蚊取り線香の共同開発を開始。2010年には、現地の厚生省であるFDAから許可を受け発売した。現在は反転攻勢に向け、認知度の向上に努めている段階だという。
日本で生まれた蚊取り線香と、海外生まれだが日本のみで生き残ったラムネ。日本人にとっては身近で当たり前の存在だが、世界中で愛されている姿を想像すれば、見方も変わるのではないだろうか。
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