夏の風物詩であるラムネと蚊取り線香だが、実は日本国内だけでなく世界中で販売されている。
ペリーが持ち込み
日本が育てたラムネ
「年間150万本のうち、10%のラムネを海外に輸出しています。引き合いが強いので、今後、販路を拡大して輸出量を増やしていこうと思います」
こう語るのは清涼飲料水などの製造・販売を手がける木村飲料(静岡県・島田市)の木村英文社長だ。約10年前から海外の展示会などでラムネを積極的に売り込み、今では台湾、シンガポール、アメリカ、イギリスなど約10カ国に輸出している。ガラス玉のコロコロと動く姿が子どもの心を捉え、価格も日本円にして100~150円程度なので親も買い与えやすいことから、海外では総じて好評だという。
同社は、元々国内向けにラムネを製造・販売してきた。ピーク時は1975年頃で年間300万本。その後、国内の販売量が減少し、海外に活路を求めることになった。「200ミリリットルでは物足りない」という欧米の顧客ニーズにこたえるため、倍近い410ミリリットルの「元祖ビー玉ラムネ ユニバーサルサイズ」も輸入用として製造している。
木村社長によれば、同社が貿易会社と組んでラムネの輸出を始めたのがきっかけで、他の貿易会社も、ラムネ製造メーカーと組んで輸出をするようになったという。ラムネの海外輸出ブームはここ10~15年の傾向であるといえる。例えば、年間約4000万本と日本一のラムネ生産量を誇るハタ鉱泉(大阪府・大阪市)は、約15年前からラムネの輸出を開始し、輸出量は15万本から150万本まで10倍近くにまで増加した。ビー玉を落とす開け方が珍しがられているという。
現在、ラムネを製造しているのは日本だけだが、発祥の地はイギリス。それが幕末のペリー来航とともに日本に伝えられ、国内でも製造が始まった。栓の役割を果たす丸いビー玉の製造は難しく、製品の不良率も高かったという。欧米メーカーは、扱いが容易な王冠型の蓋が普及するとそちらにシフトしたが、日本メーカーは真円(完全な円)に近いビー玉の製造技術を確立したため、現在に至るまで日本だけで生産が続くことになった。
ラムネを主力とする倉敷鉱泉(岡山県・倉敷市)の資料によれば、1904年に王冠型の栓を用いるものをサイダー、玉入り瓶のものをラムネと呼び区別するようになった。ラムネの語源はレモネード(レモン風味のサイダー水)、サイダーはシードル(リンゴ酒)という違いはあれど、味による区別ではなかった。ただ、誰もがイメージするラムネの味というものが、ある時期から確立したのは確かのようである。