これまではA地点からB地点までを、自動運転で移動するための技術の競争でした。しかし商用サービスの段階に入ると、運転以外の技術が重要になります。ロボットタクシーは呼び出しを受けると、乗客が待つ場所まで行き、そこから目的地まで走行します。乗客を降ろしたあと普通のタクシーの場合であれば、駅などのタクシープールで客待ちをするか、道を流して客を見つけるかなどを、それぞれのドライバーが経験で判断します。ロボットタクシーの場合はどうでしょう。
ロボットタクシーはクラウドの管制システムに接続されています。利用者がスマホアプリで配車を要求すると、管制システムは最適なロボットタクシーを選んで指示を与えます。そして、乗客が降りたあとも、管制システムはロボットタクシーに次の指示を与えなければなりません。
管制システムは、数千台、数万台のロボットタクシーの状況を常に把握して、実車率を最大化し、かつ利用者の待ち時間を最小化するための指示を与えなければなりません。それには、ロボットタクシーの運行からデータを収集し、分析し、管制システムのアルゴリズムを改善するというサイクルを繰り返すことが必要です。すでにウェイモは、そのフェーズに進みました。
出遅れる日本
残念ながら、日本の公道で継続的に自動運転車の走行試験を行う環境は整っていません。日本政府は2020年をめどに、ドライバーが操作のすべてを自動運転に委ねることができる「レベル3」の高速道路での実用化などを目指しています。警察庁が12月20日に公表した改正道路交通法の試案には、このレベルを想定した、車の自動運転に関する規定が初めて盛り込まれています。
道路交通法第70条の安全運転義務には「ハンドルやブレーキ、そのほかの装置を確実に操作し、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と記載されています。自動運転のための装置は「そのほかの装置」にあたり、自動運転中もドライバーが自動運転のための装置を操作しているという解釈です。必要が生じた場合には、ドライバーはいつでも運転を引き継げる状態でなければなりません。
日本でも自動運転に関する法律の対応がようやく始まりましたが、それはドライバーの運転と、自動運転の関係に着目したもので、ロボットタクシーなど、自動運転技術を用いた新しいモビリティサービスを可能にする法律の議論はまだまだ先のようです。自動運転のタクシーの実証実験がいくつか行われていますが、いずれも短期間の、コースを限定した実施に留まっています。