イノベーションの風を読む

2018年12月21日

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 自動車や自転車などの移動手段(モビリティ)をモノとして販売するのではなく、サービスとして提供するという概念を、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)と呼んでいます。また、いろいろなモビリティサービスを統合して、ルートの検索や決済などをシームレスに行うことができるスマホアプリもMaaSと呼ばれています。

 鉄道やバスなどの公共交通や、タクシー、レンタカー、カーシェアもモビリティサービスです。海外では、自転車やスクーターなどのシェアリングサービスや、(Uberのような)ライドヘイリングサービスなど、新しいモビリティサービスを提供する事業者が続々と登場しています。

 最近、メディアで話題になるMaaSの多くは後者のスマホアプリです(ここではMaaSをこちらの意味で使います)。これまでも、公共交通の乗り換え案内、列車の指定席の予約、自動車や徒歩でのルート案内(ナビ)、タクシーの配車サービスなどのスマホアプリがありましたが、ユーザーは移動単位ごとに、それらを選択して使わなければなりませんでした。SNSやスマートフォンのように、大きな利益を生み出すことが期待される事業のプラットフォームとして、多くの企業が競ってMaaSの開発に取り組んでいます。

(oatawa/Gettyimages)

MaaS乱立の兆し

 トヨタ自動車と西日本鉄道(西鉄)は、11月1日から福岡市およびその周辺地域において、トヨタが提供するmy routeというスマホアプリを使ったMaaSの実証実験を始めています。福岡市の実証実験では、自転車シェアのメルチャリ、タクシー配車サービスのJapanTaxiと連携しており、ルート検索後にそれぞれのアプリが起動され予約などを行うことができます。レンタカーはトヨタレンタカーです。西鉄は自社が運行するバスの位置情報を提供しています。

 日立製作所とJR東日本は、Ringo Passというスマホアプリを使ったMaaSの実証実験を、モニター企業の従業員限定で行っています。利用できるサービスは、ドコモの自転車シェアと、国際自動車のタクシー配車サービスで、JR東日本を含めた乗り換え案内の機能は未対応のようです。Suicaをモビリティサービスの鍵として利用することができるとのことです。

 小田急電鉄は、「小田急MaaSアプリ」(仮称)の開発を開始し、2019年末までに実証実験を実施するという発表をしました(12月12日)。このアプリは、乗り換え案内サービス「駅すぱあと」のヴァル研究所の検索エンジンと連携し、小田急グループの鉄道やバスなどの交通データのほか、タイムズ24のカーシェアサービスの所在地や車両空き情報などのデータや、ドコモの自転車シェアのサイクルポートの所在地や自転車貸出可能台数などのデータを表示することができ、公共交通を降りた後のラストワンマイルの移動手段として、パーソナルモビリティ(次世代型電動車椅子)WHILLとの連携も行う予定だとのことです。

 すでに、MaaSが乱立しそうな気配になっています。ユーザー視点では全国どこへ行っても同じMaaSアプリを使いたいですし、それぞれの地域ごとのモビリティサービスを網羅して、移動の目的に最適な提案をして欲しいと思います。しかし、MaaSオペレーター(事業者)の都合で、特に鉄道やバスなどの公共交通について、グループのサービスと競合するモビリティサービスが選択できないとしたら不便です。移動単位ごとにアプリを使い分けている現在と、あまり変わりがなくなってしまいます。

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