「北京は我が故郷だ!」
案の定、「中国企業ではない」発言は中国国内で罵声を招来した。そういうところを中国の国民感情、ナショナリズムは決して無視できない。楊氏は早速9月16日に消火隊出動で中国国内向けのメッセージを配信した――。
「外国メディアの取材でちょっとした誤解を招きました。グローバルの過程には異文化の翻訳ほど難しいことはありません。時々適訳がなかったりもします。レノボは成功した中国企業だけでなく、包容力をもつグローバル企業にもなる、というのが私の夢です。世界で商売をしながら、グローバルの人材と資源を惹き付ける必要があるからです。海外で10数年も頑張ってみると、中国企業にとって国際化の道を切り開くことがいかに難しいかを思い知らされました。とはいっても、われわれの出自を忘れることは決してありません。故郷がどこにあるかも忘れません。北京は私の故郷ですし、中国はわれわれの70%の従業員の故郷でもあります。われわれは中国に根ざしたグローバル企業の模範を志しています。中国のレノボ、世界のレノボです。皆さんにお願いします。一緒に頑張りましょう」(「Teck Orange」2018年12月4日付 原文参照)
さらに、レノボは声明を発表し、「外国メディアは楊CEOの取材報道にあたって、楊の全体的表現を曲解し、また記事の見出しに断章取義した表現を用いることによって、誤解を招いた」と、外国メディアを悪者にした。「断章取義」とは、原文の一部を取り出して意図的に原意を歪曲したり、不正に解釈することを指す。
記事を見る限り、込み入った説明があったわけでもなく、非常にシンプルな表現だった。そこで曲解やら断章取義やらあり得るのだろうか。そうした水掛け論を止めておきながらも、1つだけ証明されたことがある。それは、「レノボは中国企業ではない」という言説だけは間違っていたことだ。中国企業であることを自ら認めた以上、改めて通信傍受の疑いなどを晴らす必要が出てくる。それは、これからしっかり検証されるだろう。
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