2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年1月28日

 竹島問題、慰安婦問題、さらに最近では、「徴用工」に関する判決から、2018年12月20日の韓国軍による海上自衛隊の哨戒機に対するレーダー照射事件まで、日韓関係を悪化させることが相次いで起きている。このような状況下で、日本と韓国の一般世論は、SNS等を通じて、感情的対立に発展しつつあり、両国の関係には改善の兆しがない。この感情的対立をいかに制御し、悪循環を断つか。困難な課題である。 

(BsWei/Anatolii Kovalov/Olga Kashurina/iStock)

 まず、昨年暮れに起きた韓国の駆逐艦から海上自衛隊の哨戒機へのレーダー照射事件はあってはならないことである。火器管制レーダーを照射したかどうかの事実は、韓国側がきちっと内部ログや関係者聴取をすれば明快に分かるのではないか。何事につけ日韓両国間の最大の問題点は、事実の共通認識が出来ないことである。韓国軍はきちんと調査をおこない、事実を出すべきであろう。報道による韓国側の説明は不明確で一貫性に欠け、多くの者が納得できるものではない。先日、韓国側の出した情報は、日本側の提出ビデオを使うなど、適切な反論になっていない。加えて、韓国側は、日本側哨戒機の低空飛行を非難し、韓国側に責任はないと言わんばかりである。が、それは論理のすり替えであり、レーダー照射を認めたのも同然である。そうであれば、速やかに謝罪すれば済むことである。

 1月8日、岩屋毅防衛大臣は、今後、両国の防衛当局間の協議で、事実確認のため、自衛隊の電波記録を提示することも検討すると述べたが、そういうことをして事実だけはあくまで明確にすることが重要だと考えられる。また、日本の排他的経済水域(EEZ)内の公海での軍船の活動を自衛隊機が国際法に従って観察をすることは当然の行為である。

 「徴用工」の問題の展開も残念な事例である。1965年の日韓基本条約締結時の協定で、賠償請求権の問題は、戦後李承晩ライン強行による船員の拘束や漁船の拿捕没収などを含む日本が韓国に対して有するものを含め、完全かつ最終的に解決していることは、韓国政府も共有してきた法的立場である。

 それが、文在寅政権の登場後、あやふやにされている。この法的立場を韓国政府がきちっと守っていかない限り、新たな展開は期待できないであろう。また、請求権を政府対政府のレベルで解決したのは、韓国側の要望を取り入れた結果でもある。したがって、韓国人が請求する先は、韓国政府であり、日本政府や日本企業ではない。

 安倍総理は選挙を控え支持率を上げるために紛争を政治利用しているとの見方は、最近韓国のメディアによく見られる韓国流の解釈である。安倍総理が登場した時には「極右」とレッテルを張られ警戒された。進化もあるべく先入観を排して、ありのままの行動を見るべきだと韓国の人達には言いたい。文在寅政権は反故にするつもりのようだが、あのようなことが政治的に可能だとは思ってもみなかった画期的な2015年12月28日の慰安婦問題の解決に関する日韓合意は、安倍政権によって出来たものだった。独りよがりの間違った日本理解は、日韓双方にとって有益ではない。残念なことに、それにはしばしば日本のメディアの影響もある。 

 日韓両国は、高まる不信感を抑えて行かなければならない。とりわけ、約束を守ることにより信頼は生まれる。双方の指導者達が世論をリードしていかなければならない。日韓関係に関する限り、世論に追随していては改善しない。同時に、常識的な韓国の人達には声を出して貰いたい。 

 なお、既にやっていることではあるが、日本は、米国や価値や利益を共有する西側諸国等との関係を緊密にして、日韓関係などについても随時話していくことを重視して行くべきだろう。韓国と向き合うだけよりも、意外と解決策が見えてくるかもしれない。
 

  
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