2024年12月6日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年11月19日

  韓国大法院(最高裁)は10月30日、日本統治時代に動員された韓国人の元「徴用工」4人が新日鉄住金に対し損害賠償を求めた訴訟の差し戻し上告審において、新日鉄住金側の上告を棄却、1人あたり1億ウォン(約1000万円)の賠償を命じた2013年の高裁判決が確定した。

(rclassenlayouts/JulyVelchev/wjarek/iStock)

 本件裁判における核心的論点は、「日韓請求権並びに経済協力協定」(1965年の日韓基本条約の付随協定)によって個人の損害賠償請求権が消滅したか否かである。請求権協定の第2条は、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、(中略)、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と規定している。しかし、韓国大法院の判決は、以下のような論理で、原告への損害賠償を認めるべきであるとした。

・原告の損害賠償請求権は、日本の不法な植民地支配を前提とする「強制動員の慰謝料請求権」である。

・請求権協定は、日本の不法な植民地支配に対する賠償を請求するための交渉ではなかった。

・日本政府が植民地支配の不法性を認めず、強制動員に対する法的賠償を根本的に否定した中で行われた請求権協定の交渉過程を考えれば、「強制動員の慰謝料請求権」が請求権協定の適用対象に含まれるとはみなし難い。

 今回判決は、国際法にも歴代日韓政府の見解にも違反する、由々しい判決である。韓国の歴代政権は、「徴用工」については請求権協定で解決済みであるとの立場を維持し、盧武鉉政権下では個人補償をする場合の責任は韓国政府にあるとの見解を出した。そして、それに基づき実際に国内支払いが行われている。今回判決はそれと矛盾する。更に今回の裁判の原告は徴用ではなく「募集」に応じた者であることが明らかになっている(国家動員令には「募集」と「官斡旋」、「徴用」があった)。11月1日、安倍総理は衆議院予算委で「徴用工」ではなく「旧朝鮮半島出身労働者」と呼びたい旨答弁した。


新着記事

»もっと見る