2022年11月29日(火)

韓国の「読み方」

2018年8月17日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

 韓国で今年から国家記念日となった「慰安婦の日」(8月14日)は、想像以上に騒ぎにならなかった。日本政府やメディアの間には事前に警戒感があり、日本の反応を肌で知る在京韓国大使館にも心配する声が強かったのだが、良い意味で予想が裏切られたと言えるだろう。私も、両国ともに慰安婦問題で関係を悪化させたいとは考えていないものの、韓国側の軽い言動に日本側が過剰反応する恐れはあるだろうと考えていた。だが、そうした心配も今年は当たらなかったようだ。

(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 ただし、日韓関係に大きな影響を与える問題について韓国側が軽く考え、日本側が過剰反応する構図がなくなったわけではない。その典型が慰安婦問題である。そもそも慰安婦問題に対する関心は今や、韓国より日本の方がはるかに高い。日本のことを知らない韓国の政府当局者やメディア関係者にそう言うと必死に否定するけれど、そうした反論は「被害者である韓国の方が強い思いを持っていて当然だ」という思い込みから出ているものにすぎない。日韓の状況をきちんと比較して反論してくる人には会ったことがない。

 韓国世論に絶大な影響力を持っていると言われることの多い「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連、旧韓国挺身隊問題対策協議会=挺対協)」にしても、実態以上に評価されている面がある。この団体は今年初め、青瓦台(大統領府)サイトのシステムを使って電子署名集めをしたのだが、結果は30日間で20万人という目標を大きく下回った。団体幹部は私の取材に対して「平昌冬季五輪の期間中だったから大々的な署名集めをしなかった」と釈明したが、実際にはかなりショックを受けただろう。集まったのは、1919人だったのである(署名集めの経緯については毎日新聞サイト「政治プレミア」のコラム「挺対協は過大評価されていないか」https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20180727/pol/00m/010/004000d で詳しく紹介した)。

社説で取り上げた韓国の新聞はゼロ

 「慰安婦の日」の式典では文在寅大統領が演説で、「慰安婦問題は韓日間の歴史問題にとどまらず、人類の普遍的な女性の人権の問題だ」「私たち自身と、日本を含む全世界が反省し、二度と繰り返さないという教訓にすることで、初めて解決できる」と訴えた。そして、2015年の日韓合意に直接は言及せずに「この問題が韓日間の外交紛争につながることを望まない」と語った。

 日韓合意ですべて解決したとは言えないものの、再交渉を求めるようなことはしないという従来姿勢を改めて示したものだ。この問題に深く立ち入る考えを持っていないことの再確認だとも言える。日本の新聞の中には「国内の求心力維持に『歴史カード』を使い続ける姿勢を改めて鮮明にした」と評価するものがあったけれど、これは的外れである。韓国社会における日本の存在感低下に伴い、政権の求心力を維持するほどの効果を対日外交に期待するのは難しくなっているからだ。

 初めて国家記念日になったということもあって韓国メディアも文大統領の演説を報じたが、ほとんどの新聞は5面や6面で取り上げた程度。慰安婦問題に熱心な進歩系紙「ハンギョレ新聞」を含めて、社説で取り上げた主要紙はゼロだった。

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