車内販売のコーヒーは700円超え!
定刻の午前8時1分に発車。中国の高速鉄道では、なぜだかわからないが、定刻前の発車も珍しくない。自分の経験の限りでは、この日のように定刻に出ることのほうがむしろ少ないのでは、と感じる。定刻に遅れることより、1~2分早く出発することのほうが多いのだから、何とも不思議。プラットホームに降りる際、人数を数えており、乗車予定者が全員降りると、そこでゲートを締め切ってしまう。発車1分前に乗り込んでくることは、仕組み上、不可能だからなのかもしれないが、理由は定かではない。
動き出して10分後、朝食を販売する乗務員の声が聞こえてきた。たくさんの商品を積み込んだワゴンの販売車ではなく、トレーに数個のサンドイッチとコーヒーを載せている。通路を挟んで私と反対側の窓側に座った男性がそれを買っていた。なるほど……こんなにすぐに車内販売があるのか。あとでわかったが、ワゴンの販売車ではお弁当、サンドイッチ、果物、フライドチキンのような軽食が販売されていた。
実は前日、西九龍駅を視察した際、駅に飲み物の自動販売機がないことに気づいた。「離港(departures)」から先がどうなっているかはわからなかったが、飲み物を確保しておいたほうがいいのではないかと思い立ち、翌朝、わざわざ500mlのペットボトルのお茶を買って持ち込んだのだ。実際、香港側を出境、中国側に入境しても、日本ではあちこちで見かけるドリンクの自動販売機は1つもなかった。だから、乗車するまで、自分は飲み物を持ち込んで正解だと思っていたのだが、実はそんなものはまったく必要なかった。なぜかというと、車両と車両の間に給湯器が設置されていることに加え、車内販売があること、そして、1等だけなのかどうかは不明だが、無料の飲み物サービス(温かいお茶、コーラ、オレンジジュースなど)があるからだ(しかも、無料の飲み物は9時間のうち4回も回ってきた)。
中国人は昔から、外出時に飲み物を持ち歩く習慣があり、今でもそれは変わらない。そのため、大きなターミナル駅や空港のトイレの前には必ず無料で利用できる給湯器がある(来日した中国人観光客は、そうした中国での生活習慣があるので、日本の空港やターミナル駅でも、「給湯器はどこ?」と探し回ってしまうほどだ)。中国では高速鉄道も例外ではなく、トイレ横に給湯器が設置されているので、乗車後も、いつでもお湯を自分の保温ボトルに入れることができる。私は“車内観察”のため、何度か給湯器がある場所に足を運んでみたが、そのたび、いつも誰かが給湯器の前に立ってお湯を保温ボトルに入れていた。
マイボトルを持つ習慣がない私は「あっ、しまった!」と思ったが、持参したペットボトルのお茶はすでに冷たくなっている。そこで、次に車内販売がきたときにコーヒーを注文してみた。乗務員は手にサンドイッチしか持っておらず、「少々お待ちください」といっていったんどこかへ行き、10分ほどで熱々のコーヒーを持ってきてくれたのだが、その金額を聞いてビックリ。45元(約760円)もしたからだ。中国の大手コーヒーチェーンの高い美式珈琲(アメリカンコーヒー)でさえ30~40元くらいなので、これはかなりの高額。思わず価格を2度も聞き返してしまったくらいだ。そのとき、私は細かい中国元を持っていたので現金で支払ったが、アリペイやウィーチャットペイといったモバイル決済もできる。ただ、このとき、列車内で香港ドルを使用できるかどうかを確かめなかったことは残念だった。