2024年12月2日(月)

中島恵の「中国最新トレンド事情」

2019年1月28日

2018年9月23日、香港(西九龍駅)-北京(北京西駅)間に高速鉄道が開通した。総距離は約2000キロ、移動時間は約9時間。1国2制度である香港の街のど真ん中から「中国」に入境すると話題になった鉄道に乗車し、約9時間の列車の旅を体験してみた。

香港から北京に出発する列車。長距離には「和諧号」や「復興号」という中国の列車が使用される

高速鉄道のために新たにできた西九龍駅

 2019年1月初旬、開業して半年足らずの香港・西九龍駅に到着した。場所は、この駅に隣接する地下鉄(MTR)のオースティン(柯士甸)駅と、エアポートエキスプレスの九龍駅の中間にある。高速鉄道のためにできた新しい駅だ。「香港から北京まで直通列車に乗ってみたい!」と思い立ち、航空券を購入したのは前年12月のこと。すでにTRIP.comという中国の鉄道やホテルの予約サイトでチケットは購入済みだったが、当日の発券では混み合うと思ったことと、駅ビル内を少し探索してみようと思い、乗車前日にチケットの引き取りに訪れた。

西九龍駅の建物は地下5階、地上4階建て

 西九龍駅は地下5F、地上4F建ての大きなターミナルビルの中にある。チケット売り場と出発エリアは地下1Fだ。中国人や香港人は券売機でもチケットを購入できるが、外国人は窓口でパスポートを見せて購入する。ネットで事前購入している人も、窓口に並んで予約番号を伝えれば発券してもらえるシステムだ。もちろん、空席があれば、どのチケットでも当日の購入も可能。香港からは中国各地44駅に線路が延びており、1日約8万人が同駅を利用する。

 同じフロアを見渡してみると、スターバックスなどのカフェ(持ち帰りのみ)やベーカリー、コンビニ、土産店などがある。座席に座れる飲食店はないが、1つ上のフロアには「世界で最も安いミシュラン」といわれ、東京・日比谷にも店舗を構える人気レストラン『添好運』があった。店内に入ってみたが、えび餃子、シュウマイなどの点心や焼きそばなどの軽食が手ごろな値段で食べられ、出発前や到着後に腹ごしらえをする乗客たちで賑わっていた。

鉄道網の拡充でますます縮む香港と広東省の距離

 今回、香港まで延長された高速鉄道は、正式には「広深港高速鉄道」という。中国の国家プロジェクトで、広州、香港、マカオの一体化を目指すグレートベイエリア(粤港澳大湾区)構想の一環であり、巨大な中国の交通網政策にも組み込まれている。中国は全国各地に高速鉄道網を拡充しており、2018年には約2万5000キロにまで到達。今後、2020年には約3万キロに、2030年には4万5000キロまで網羅するという壮大な計画だ。南の広東省・深圳北駅までは2011年に開通していた。それが、2018年9月に西九龍駅(深圳北から約26キロ)まで延長され、中国の大都市から香港の街のど真ん中まで、一度も降りずに鉄道で行けるようになった。

2018年にできた西九龍駅。隣の地下鉄オースティン駅とつながっている

 従来、香港から広東省・深圳までは鉄道の羅湖駅まで行き、そこで香港を出境、中国側に歩いて入境する方法や、バスや自動車で同様に出入境する方法などいくつかのルートがあるが、鉄道を使うと、香港のホンハム駅から羅湖までは約40分かかる。他の方法でも1時間程度は見ておく必要があるが、新しくできた西九龍駅から深圳北駅までは、最短の列車だと18分で到着することができる(いずれも出入境手続きの時間は除く)。私は今回の旅行の前に、逆コースの中国側にある福田駅(深圳北と西九龍駅の中間駅)から西九龍までの乗車を経験したが、福田から香港までは、わずか12分で到着する。そのスピードにとても驚かされた。ちなみに、ホンハム(香港)-広州東駅までも、従来は在来線で約2時間かかったが、高速鉄道なら、西九龍(香港)-広州南駅(新駅)に47分で到着できるようになった。鉄道網の拡充で、香港と広東省の距離はますます縮まったといえる。


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