チケットとパスポートを見せて改札を通る。簡単な荷物検査はあるが、飛行機と違い、手荷物の重量をチェックされることはなかった。ホームページには、荷物の大きさは縦、横、高さの合計で130センチ、重さは20キロまでと制限が書いてあったため、私は荷物の重量を恐れて相当少なくしていったのだが、周囲を見るかぎり、制限よりも大きなスーツケースや20キロ以上あると思われる重い荷物を持っている人がかなりいた。改札を抜けると地下に降りるエレベーターやエスカレーターがあり、それで地下3階に移動。そこに香港側のイミグレーションと税関があった。ここまでは香港の鉄道スタッフが案内している。イミグレーションの手続きを終え、香港を出境すると、免税店が並ぶ、少し広い通路に出る。そこを道なりに進んでいくと、中国側のイミグレーションが見えてくる。
ふと通路の下を見ると、黄色のラインが引いてあり、上を見ると「内地口岸区(mainland port area)はこちらへ」と書いた掲示があった。つまり、そのラインが香港と中国の“境目”を意味するところのようだ。あとで北京に到着したあとでわかったのだが、香港で中国に入境するため、北京では、駅を降りてそのまま何の手続きもせず、市内に出る。それは少し不思議で、やはり違和感のある光景だった。
中国側のイミグレーションと税関に向かうが、そこでちょっとしたアクシデントがあった。周囲の人々と一緒に「外国人」の列に並ぼうとしたのだが、その手前に何十台もの機械が見えた。どうやら、そこで先に指紋認証を行うらしい。昨今は日本の空港でも導入されているが、その機械の前で、自分の指紋とパスポートを登録する。ここからは中国側の係員が担当になるが、指紋認証を先に済ませるという説明がないので、少しわかりにくいかもしれない。
指紋を登録後、「外国人」の列に並び、中国に入境、税関を通る。その後、荷物検査を経て、広い待合室(コンコース)に出た。この段階で、午前7時。香港側の改札口を出てから約30分が経過していた。この広い待合室には、香港を出発するすべての人が入るようになっており、それぞれの行き先のゲートが開くまでここで待機する。しかし、ここは、地理的には「香港」でも、手続き上はすでに「中国」のはず。だが、この待合室で案内をしてくれていたのは、なぜかオレンジ色の制服を来た香港側の係員たちだったのだ。(後編に続く)
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。