不調時は休める環境づくりを
残念なことに、「どんな対策をしても、人口の5~10%はインフルエンザにかかってしまうのです」(堀さん)ということだそうだ。もちろん個人でやるべき最低限のマナーとして、咳エチケットなど人に感染させないよう努力する必要はある。それ以外の自衛の部分については、(感染症に)弱い立場の人が守られることは前提として、その人自身がどれだけリスクを受容するか、という観点もあり、そこは個人の価値基準に委ねられる。
「ただし、インフルエンザの補助をする企業でも、たびたびアウトブレイクして問題になる麻疹や風疹から社員が守られているか、その確認や接種のための補助をしているかというとあまりされていない。健康支援や危機管理としてインフルエンザ以外のワクチンにも関心をもってほしいと思います」(堀さん)。
大事なのは、かかってしまったら休むこと。職場や集団生活の場に行かないこと。「ちょっと調子が悪いな…」と思ったら遠慮なく休める環境づくりが重要だ。
主に震災対策とされているBCP(事業継続対策)は、インフルエンザ対策としても有効ではないだろうか。在宅勤務ができるよう仕組みを整えることはまさに役に立つ。子どもがかかってしまって親が休まなければならないケースもあるだろう。子どもの場合、インフルエンザの出席停止日数については「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」とされているが、大人は法的な規定もないため、中には無理に出勤してしまう人も少なくないだろう。どうしても出社しないといけない場合、大勢の人がいるところにはいかない。開いている会議室などで対応するなど「隔離」と同じ工夫をするのも一つの方策だ。「空間を分けることは、お金をかけずにできる有効な方法です」(堀さん)。
とはいえ、基本的には、「インフルエンザになったら休む」というのが当たり前の考え方とならないと、大流行は防げないだろう。体調が悪いときは休める環境づくり、「体調が悪いのに無理して出社するなんて格好悪い」、というマインドリセットが実はインフルエンザ対策として最も重要なのかもしれない。
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