2022年8月10日(水)

使えない上司・使えない部下

2019年3月20日

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大塚さん

 当時(1970年代後半~80年代前半)は、アメリカでは人種差別がひどかった。日本人で、貧しい場合は激しい差別を受ける時代でした。私も「ジャップ」って、よく言われました。本来は、許されない差別用語だけどね。住んでいた地域は、生活水準の相当に低いところでした。貧しい日本人にはレストランなどの床拭きの仕事ぐらいしかなかった。

 上司はアメリカ人で、知的障がい者。「日本人で、体も小さく、俺よりももっと馬鹿な奴がいる」と笑って、私をバカにしていたようです。私の方が仕事は多少できたから、しばらくすると彼は部下になった。だけど、その後も英語の先生をしてくれた。いい奴だったな。

 27歳のときに帰国して、クリーニング業を座間市(神奈川県)ではじめたんです。ほかの会社からの支援も、まとまったお金もない。名刺の印刷代の1500円くらいの投資でスタートしました。運よく、早いうちに仕事が増え、(前述のように)障がい者を雇ったのですが、違和感はありませんでした。一時期、地域でも「重度な知的障がい者をたくさん雇う会社」と奇異に見られていたようです。そんな偏見や差別には、絶対に負けてなるものか、という思いでした。

なぜ、健常者と障がい者への接し方を変えるの?

 今、振り返ると、この30年は障がい者の社員たちのおかげで楽しかった。あるとき、知的障がい者の男性が道の真ん中で立ち小便をしていた。もちろん、だめな行為だから叱るけど、ある意味で人間味があふれているじゃないですか…。彼らを辞めさせる? 使えない? そんなふうには考えませんよ。かけがえのない戦力です。

 仕事が嫌いな人は障害の有無や程度に関わらず、使えないのかもしれない。仕事が好きならば、必ず、使えるようになります。会社として、上司としてそのようにするべきでしょう。ここで働く障がい者の多くは仕事が好き。だから、みんなが使える人材です。

 以前は、健常者のパート社員の中に「知的障がいの人に何度言っても、仕事を覚えない」と不満を言う人がいました。私は、こう言ったんです。

 「そんなのは、当たり前でしょう。そもそも、知的障がい者は健常者のようには理解ができないのだから…。あなたは、耳の不自由な人に“きちんと聞き取りなさい!”と言いますか? 言えないでしょう。なぜ、知的障がい者にはその配慮をしないの? 健常者で高熱な人がいると、“大丈夫?早く、家に帰ったら?”なんて言うじゃない。なぜ、健常者と障がい者への接し方を変えるの?」

 知的障がい者の体臭を「くさい」と指摘するパート社員もいました。私は「あなたは、健常者の中高年社員に向かって、加齢臭がすると言える?」と聞いた。すると、パート社員は「健常者にはさすがに言えない」と答えた。だから、注意をしたんです。「それは偏見であり、差別。仮に体臭がキツイならば、双方に言わないといけない。健常者には言えないが、障がい者には言おうとするのはおかしいでしょう?」。パート社員は黙っていました。

 最近は、健常者の社員たちの多くが慣れてきたようです。うちの会社では、差別は絶対にダメ。それを感じたら注意するし、ひどい場合は叱る。ただし、区別をせざるを得ない場合はあります。たとえば、工場で健常者と障がい者が一緒に仕事をしていますが、一部に危ない作業はある。障がい者がその機械を触ろうとしたら、注意指導をせざるを得ない。叱ることもあるでしょう。今まで、大きな事故はありませんが。

 障がい者の社員たちから、社内で私はいちばん嫌われているみたい…(苦笑)。工場内を頻繁に見まわったり、何かがあれば小言を言うから。経営者として責任がありますからね。だけど、いちばん好かれているみたい。私が職場に行かないと、さびしいようです。工場に顔を出すと、喜んでくれる。かわいいですよ…。やはり、人間関係が大切だとあらためて思います。

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